要点まとめ・第2章 人工知能をめぐる動向
知識表現とエキスパートシステム(シラバス 技術4)
学習目標
知識をコンピュータで扱える形に表す方法と、専門家の知識で判断するエキスパートシステムについて、代表的な研究やシステムを挙げながら説明できるようにします。
要点
第2次AIブームと知識
1980年代の第2次AIブームでは、コンピュータに知識を与えて賢く動かす研究が盛んになりました。その土台が、知識をどう表すかという知識表現です。
会話プログラムの先駆け
イライザ(ELIZA)は、ジョセフ・ワイゼンバウムが1966年に発表した会話プログラムです。入力文のパターンに合わせ、用意した型に当てはめて返事を作ります。心理療法の聞き手をまねた応答が知られていますが、文の意味は理解していません。
エキスパートシステム
ある分野の専門家の知識をルールとして蓄え、推論で判断を助けるシステムです。
- DENDRAL:1960年代にスタンフォード大学で始まり、質量分析のデータから有機化合物の分子構造を推定しました。最初のエキスパートシステムとされます。
- マイシン(MYCIN):1970年代にスタンフォード大学で開発されました。血液の感染症などについて原因菌を推定し、抗生物質の選択を支援しました。
- インタビューシステム:専門家の経験的な知識は本人も言葉にしにくいため、システムが質問を重ねて知識を引き出し、知識ベースづくりを助ける研究が進みました。
知識の表し方
意味ネットワークは、概念を節点とし、概念どうしの関係をラベル付きの矢印で表します。代表的な関係は次の3つです。
- is-aの関係:「AはBの一種」を表します(ペンギンは鳥の一種)。上位の概念の性質が下位の概念に引き継がれます。
- part-ofの関係:「AはBの一部」を表します(車輪は自転車の一部)。
- has-aの関係:「AはBを持つ」を表します(自転車は車輪を持つ)。
オントロジーは、ある分野の概念とその関係を、共有できるよう明示的に定めたものです。Cycプロジェクトは、人間の一般常識を知識として書き込むことを目指して、ダグラス・レナートが1984年に始めました。セマンティックWebは、ウェブ上の情報に意味を表すデータを付け、コンピュータが内容を処理できるようにする構想で、ティム・バーナーズ=リーらが提唱しました。
データから知識を取り出す
人手で知識を書くのには限界があるため、大量のデータから有用なパターンを見つけるデータマイニングが使われるようになりました。ウェブページの内容やリンク構造を対象にしたものはウェブマイニングと呼ばれます。
質問に答えるシステム
Question-Answeringは、自然言語の質問に答えを返す研究分野です。IBMのワトソンは、2011年に米国のクイズ番組で人間のチャンピオンに勝ちました。大量の文書から答えの候補を探して確からしさを評価する仕組みで、意味を人間のように理解しているわけではありません。東ロボくんは、国立情報学研究所を中心に2011年に始まった、東大入試の突破を目指すプロジェクトのAIです。模試では多くの大学の合格圏に入りましたが、東大の水準には届かず、文章の意味を読み取る難しさが示されました。
つまずきやすい点
- ELIZAは文の意味を理解せず、入力のパターンに合わせて返答を組み立てていただけである点
- DENDRAL(質量分析のデータから有機化合物の構造を推定)とMYCIN(感染症の原因菌の推定と抗生物質の提案)の対象の違い
- is-a(〜の一種、上位の性質を引き継ぐ)、part-of(〜の一部)、has-a(〜を持つ)の区別
- ワトソンや東ロボくんは、質問や問題文の意味を人間のように理解して答えているわけではない点
シラバスのキーワード
シラバス第1.4版に載っている語をすべて並べています。色のついた語は用語集で解説しています。「2問」などの数字は、その語を扱う練習問題の数です。
練習問題
- #0012 エキスパートシステム開発の課題 難易度 標準・単一選択 未回答 付箋
- #0013 意味ネットワークの関係と性質 難易度 標準・単一選択 未回答 付箋
- #0014 初期AIシステムの知識の扱い方 難易度 標準・単一選択 未回答 付箋
- #0131 DENDRALの位置づけ 難易度 基礎・単一選択 未回答 付箋
- #0132 エキスパートシステムの構成と推論 難易度 標準・単一選択 未回答 付箋
- #0133 オントロジー構築の2つの立場 難易度 標準・単一選択 未回答 付箋
- #0134 セマンティックWebによるデータ公開 難易度 基礎・単一選択 未回答 付箋
- #0135 データマイニングとウェブマイニング 難易度 標準・単一選択 未回答 付箋
- #0136 東ロボくんの成果と課題 難易度 基礎・単一選択 未回答 付箋
- #0137 part-of関係と推移律 難易度 応用・単一選択 未回答 付箋
- #0313 知識表現の方法の見分け 難易度 基礎・組合せ 未回答 付箋
- #0314 マイシンの評価と実用化 難易度 標準・単一選択 未回答 付箋
- #0315 ワトソンの質問応答の仕組み 難易度 標準・単一選択 未回答 付箋
- #0316 知識を扱うAIシステムの年代順 難易度 基礎・単一選択 未回答 付箋
- #0317 アソシエーションルールの評価指標 難易度 応用・単一選択 未回答 付箋
- #0318 ウェブマイニングの3つの分類 難易度 基礎・組合せ 未回答 付箋
復習の時期が来た問題と、まだ解いていない問題から順に出題します。
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出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目4 知識表現とエキスパートシステム)
- Joseph Weizenbaum, ELIZA: A Computer Program for the Study of Natural Language Communication between Man and Machine, Communications of the ACM 9(1) (1966)
- Robert K. Lindsay, Bruce G. Buchanan, Edward A. Feigenbaum, Joshua Lederberg, DENDRAL: A Case Study of the First Expert System for Scientific Hypothesis Formation, Artificial Intelligence 61(2) (1993)
- Bruce G. Buchanan, Edward H. Shortliffe (eds.), Rule-Based Expert Systems: The MYCIN Experiments of the Stanford Heuristic Programming Project (Addison-Wesley, 1984)
- Thomas R. Gruber, A Translation Approach to Portable Ontology Specifications, Knowledge Acquisition 5(2) (1993)
- Douglas B. Lenat, CYC: A Large-Scale Investment in Knowledge Infrastructure, Communications of the ACM 38(11) (1995)
- Tim Berners-Lee, James Hendler, Ora Lassila, The Semantic Web, Scientific American 284(5) (2001)
- David Ferrucci et al., Building Watson: An Overview of the DeepQA Project, AI Magazine 31(3) (2010)
- 国立情報学研究所 人工頭脳プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」