1行定義
マイシン(MYCIN)とは、1970年代にスタンフォード大学で開発された、細菌感染症の原因菌を推定し、適した抗生物質を提案するエキスパートシステムのことです。
くわしく
マイシン(MYCIN)は、1970年代にアメリカのスタンフォード大学で、エドワード・ショートリフらが開発したエキスパートシステムです。血液の細菌感染症(菌血症)や髄膜炎の患者について、原因となっている細菌を推定し、適した抗生物質と投与量を提案しました。
仕組み
MYCINは、感染症の専門医の知識を数百個のif-thenルールとして記述していました。「もし検査の結果がこうで、患者の状態がこうならば、原因菌は〇〇である可能性がある」という形です。
推論は、結論の候補から出発し、それを裏づける条件をさかのぼって確かめる後ろ向き推論で進みます。条件を確かめるのに必要な情報があると、医師に質問します。医学の判断には不確かさがつきものなので、結論の確からしさを確信度という数値で表しました。なぜその質問をするのか、どのルールから結論を出したのかを説明する機能もありました。
評価と限界
1979年に発表された評価研究では、髄膜炎の症例に対するMYCINの処方が、感染症の専門家による目隠し評価で、専門医たちの処方と同等以上の評価を受けました。それでも、MYCINが日常の診療で使われることはありませんでした。誤った提案をしたときの責任の所在や、当時のコンピュータを診療の流れに組み込む難しさが壁になりました。
また、専門家から知識を聞き出してルールにする作業には、大きな手間がかかります。この知識獲得のボトルネックは、エキスパートシステム全般の課題として知られています。なお、同じスタンフォード大学で先に開発されたDENDRALは、質量分析のデータから有機化合物の構造を推定するシステムで、MYCINとは対象が違います。
覚え方
名前は、ストレプトマイシンなど抗生物質の名前によくある語尾に由来します。「マイシン=抗生物質」と覚えると、感染症のシステムだと思い出せます。
G検定での出題
出題のされ方
代表的なエキスパートシステムとして、対象の分野(感染症の診断と抗生物質の提案)やif-thenルールによる推論が問われます。DENDRALとの取り違えや、知識獲得のボトルネックとの関係も問われます。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| マイシン(MYCIN)このページの用語 | 1970年代にスタンフォード大学で開発された、細菌感染症の原因菌を推定し、適した抗生物質を提案するエキスパートシステム |
| DENDRAL | 1965年にスタンフォード大学で始まった、質量分析のデータなどから有機化合物の分子構造を推定するエキスパートシステム |
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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マイシン(MYCIN)は、結論がどれくらい確からしいかを確信度という数値で表し、不確かな知識を扱えるようにしていた。
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答え ◯ 正しい
確信度(certainty factor)は-1から1の範囲の値です。医療の判断にともなうあいまいさに対応するための工夫でした。
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マイシン(MYCIN)は、専門医と比べた評価研究で良好な結果を示したため、病院の診療で日常的に広く使われた。
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答え × 誤り
評価研究では専門医と同等以上の評価を得ましたが、日常の診療では使われませんでした。誤った場合の責任や、診療の流れへの組み込みの難しさが壁になりました。
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マイシン(MYCIN)では、推論を行う部分と医学知識のルールの集まりが分けて作られていたため、推論の部分を他の分野のシステムづくりに流用できた。
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答え ◯ 正しい
医学知識を除いた推論の部分はEMYCINとして、他分野のエキスパートシステムを作るための道具(シェル)に使われました。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目4 知識表現とエキスパートシステム)
- Bruce G. Buchanan, Edward H. Shortliffe (eds.), Rule-Based Expert Systems: The MYCIN Experiments of the Stanford Heuristic Programming Project (Addison-Wesley, 1984)
- V. L. Yu et al., Antimicrobial Selection by a Computer: A Blinded Evaluation by Infectious Diseases Experts, JAMA 242(12) (1979)