1行定義
知識獲得のボトルネックとは、専門家の知識を聞き出してコンピュータが扱えるルールに書き表す作業に膨大な手間がかかり、AIの開発の妨げになった問題のことです。
くわしく
知識獲得のボトルネックは、第2次AIブームの中心だったエキスパートシステムで表面化した問題です。エキスパートシステムは、医師や技術者などの専門家の知識を「もし〜ならば〜」というルールの形で蓄え、推論して答えを出します。MYCINやDENDRALが代表例です。
ボトルネックとは、瓶の首のように流れを細くする部分のことです。システムの性能は、蓄えた知識の質と量で決まります。その知識を集める工程が細い首となり、開発全体が進まなくなりました。エキスパートシステムの研究を率いたファイゲンバウム(Edward Feigenbaum)も、1980年の報告で、知識獲得をAIの決定的なボトルネックだと述べています。
なぜ手間がかかるのか
- 専門家の判断には、経験から身につけた暗黙的な知識が多く、本人もうまく言葉にできません。
- 知識を聞き出してルールに直す担当者(ナレッジエンジニア)が、専門家に何度もインタビューする必要があります。
- ルールが数千に増えると、互いに矛盾したり重複したりして、保守が難しくなります。
- 人間が当たり前に知っている常識は膨大で、すべてを書き出せません。
その後の取り組み
知識を共有し再利用するために、概念どうしの関係を体系的に定めるオントロジーの研究が進みました。常識をまとめて書き出そうとしたCycプロジェクトも、この流れにあります。
その後、データから規則性を自動で学ぶ機械学習が広がり、人がルールを書く負担は小さくなりました。ただし、学習用のデータ集めやアノテーションという形で、別の手間が生じています。
似た問題との区別
フレーム問題は「今の課題に関係することだけを選び出せない」問題です。シンボルグラウンディング問題は「記号と実世界の意味を結び付けられない」問題です。知識獲得のボトルネックは「知識を集めて書き表す手間」の問題として区別します。
覚え方
「知識は、使うより集めるほうが難しい」と覚えます。
G検定での出題
出題のされ方
第2次AIブームのエキスパートシステムで表面化した課題であること、専門家の暗黙的な知識を言語化しにくいという原因、フレーム問題やシンボルグラウンディング問題との区別が問われます。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 知識獲得のボトルネックこのページの用語 | 専門家の知識を聞き出してコンピュータが扱えるルールに書き表す作業に膨大な手間がかかり、AIの開発の妨げになった問題 |
| フレーム問題 | ある行動をするときに、無数の事柄の中から関係のあることだけを選び出して考えることが、AIにとって難しいという問題 |
| シンボルグラウンディング問題 | コンピュータが扱う記号(言葉)を、それが指す実世界の対象や感覚とどう結び付けるかという問題 |
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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知識獲得のボトルネックが大きな課題として認識されたのは、主に第2次AIブームのエキスパートシステムの開発においてである。
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答え ◯ 正しい
1980年代、専門家の知識をルールとして蓄えるエキスパートシステムが盛んに作られ、知識を集める工程の重さが表面化しました。
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専門家が開発に協力的で、インタビューに十分な時間を割いてくれれば、知識獲得のボトルネックは生じない。
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答え × 誤り
専門家の判断には経験に根ざした暗黙的な知識が多く、本人もうまく言葉にできません。協力があっても、聞き出してルールに直す工程そのものが難しいのです。
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人間なら誰でも知っている常識は量が膨大なため、エキスパートシステムに一般常識まで持たせようとすると、知識獲得の負担はいっそう大きくなる。
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答え ◯ 正しい
専門知識は狭い分野に限られますが、常識には範囲の切れ目がありません。常識を書き出そうとしたCycプロジェクトは、1984年に始まり、数十年にわたって続けられてきました。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目2 人工知能分野で議論される問題)
- Edward A. Feigenbaum, Knowledge Engineering: The Applied Side of Artificial Intelligence, Stanford University, Report STAN-CS-80-812 (1980) (10.4 The Problem of Knowledge Acquisition)