1行定義
身体性とは、知能が成り立つには、身体を通して環境を感じ取り、環境に働きかける経験が欠かせないとする考え方のことです。
くわしく
身体性は、知能を「頭の中の計算」だけでとらえず、身体と環境とのかかわりの中でとらえる考え方です。英語ではembodimentといいます。
背景にある問題
初期の人工知能は、知識を記号で表し、その記号を規則に従って操作することで知能を実現しようとしました。しかし、コンピュータが扱う記号は、実世界の物や体験と結び付いていません。たとえば「熱い」という記号を、ほかの言葉でいくら説明しても、触れて思わず手を引く感覚は伝わりません。
このように、記号を実世界の意味に結び付けられないという課題が、シンボルグラウンディング問題です。身体性は、この問題を解く手がかりとして論じられてきました。身体で外界を感じ、働きかける経験があってはじめて、記号が意味をもつと考えるからです。
ロボット研究とのつながり
ロボット研究者のロドニー・ブルックスは、外界を詳しく表す内部モデルを作ってから計画を立てる従来の方法を批判しました。そして、センサーの入力に直接反応する単純な行動を層のように重ねる、サブサンプション・アーキテクチャを提案しました。現実の環境の中で動きながら知的なふるまいを生み出すという発想は、身体性を重視する立場の代表例です。
関連する論点との位置づけ
シンボルグラウンディング問題と中国語の部屋は、「記号を操作するだけで意味の理解が生まれるのか」という問いにかかわります。フレーム問題も、記号で書いた知識だけで現実の状況に対応する難しさを示す論点です。身体性は、こうした問いへの1つの答え方です。近年は、テキストだけで学習する大規模言語モデルが言葉の意味をどこまで理解しているか、という議論でも取り上げられます。ロボットに言語モデルを組み合わせる研究も進んでいます。
覚え方
「意味は、体で世界に触れる経験から生まれる」と覚えます。
G検定での出題
出題のされ方
シンボルグラウンディング問題を解く手がかりとして身体性が挙げられることや、記号の操作だけで知能を作ろうとする立場との違い、ロボット研究とのつながりが問われます。
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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身体性を重視する立場では、知能は頭脳にあたる計算の部分だけで決まるのではなく、身体の形や動き方、環境とのやり取りからも生まれると考える。
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答え ◯ 正しい
たとえば、モーターや制御装置をもたずに、緩い坂を安定して歩き下りる受動歩行ロボットがあります。体のつくりそのものが、ふるまいの一部を担う例です。
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ロドニー・ブルックスは、外界を詳しく表す内部モデルを先に作り、そのモデルの上で計画を立ててから動くロボットこそが、身体性を生かした設計だと主張した。
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答え × 誤り
ブルックスは逆に、詳しい内部モデルに頼る方法を批判しました。センサーの入力に直接反応する単純な行動を層のように重ねる、サブサンプション・アーキテクチャを提案しました。
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身体性は、記号を実世界の対象や経験とどう結び付けるかというシンボルグラウンディング問題に対する、答え方の1つとして論じられている。
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答え ◯ 正しい
身体で外界を感じ、働きかける経験があってはじめて記号が意味をもつ、と考えるためです。身体性そのものは問題の名前ではなく、考え方の名前です。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目2 人工知能分野で議論される問題)
- Rodney A. Brooks, A robust layered control system for a mobile robot, IEEE Journal on Robotics and Automation 2(1), 14–23 (1986)
- Rodney A. Brooks, Intelligence without representation, Artificial Intelligence 47(1–3), 139–159 (1991)
- Rolf Pfeifer, Josh Bongard, How the Body Shapes the Way We Think: A New View of Intelligence, MIT Press (2006)