1行定義
強いAIと弱いAIとは、適切なプログラムを実行するコンピュータは本当に心をもつとする立場と、心の研究の道具とみなす立場を分けた、サールの用語のことです。
くわしく
強いAIと弱いAIは、アメリカの哲学者ジョン・サールが1980年の論文「Minds, Brains, and Programs」で示した区別です。AIがどこまでできるかではなく、コンピュータと心の関係をどう考えるかという立場の違いを表します。
2つの立場
- 強いAI:適切なプログラムを実行するコンピュータは、人間と同じ意味で心をもち、ものごとを理解している、とする立場です。プログラムそのものが、人間の認知の説明になると考えます。
- 弱いAI:コンピュータは、心の働きについての仮説をより厳密に立てて確かめるための、強力な道具である、とする立場です。コンピュータが本当に心をもつとまでは主張しません。
中国語の部屋との関係
サールは同じ論文で中国語の部屋の思考実験を示し、強いAIを批判しました。記号を規則どおりに操作して正しく答えられても、意味を理解しているとはいえない、という主張です。一方で、少なくともこの論文の範囲では、弱いAIの主張に異論はないと述べています。
物理学者ロジャー・ペンローズも、著書『皇帝の新しい心』(1989年)で、人間の意識は計算だけでは説明できないと論じ、強いAIの考え方に否定的な立場をとりました。
汎用AI・特化型AIとの違い
日常的には「強いAI=人間のように何でもこなすAI」「弱いAI=特定の作業に特化したAI」という意味で使われることもあります。しかし、扱える課題の幅で分ける汎用AIと特化型AIは、もともと別の区別です。何でもこなすAIができたとしても、それが心をもつかどうかは別の問題として残ります。
画像認識や将棋のように、特定の課題で人間を上回る性能を示すAIがあっても、それだけで強いAIが実現したことにはなりません。
覚え方
「強い・弱いは性能の差ではなく、心をもつと主張するかどうかの差」と覚えます。
G検定での出題
出題のされ方
提唱者サールと1980年の論文、中国語の部屋が強いAIへの批判であること、心や理解をもつかという区別であって、扱える課題の幅による汎用AI・特化型AIの区別とは別であることが問われます。
混同しやすい用語
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強いAIと弱いAIという区別は、哲学者ジョン・サールが1980年の論文で示したものである。
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答え ◯ 正しい
論文「Minds, Brains, and Programs」で、中国語の部屋の思考実験とともに示されました。
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人間のようにさまざまな課題をこなせる汎用的なAIが実現すれば、サールの区別でいう強いAIが実現したことになる。
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答え × 誤り
汎用か特化型かは、扱える課題の幅による区別です。サールの区別は心や理解を本当にもつかどうかを問うもので、何でもこなせるAIでも心をもつかは別の問題として残ります。
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サールは、中国語の部屋の思考実験によって、強いAIだけでなく弱いAIの主張も誤りであると批判した。
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答え × 誤り
中国語の部屋が批判の対象としたのは強いAIです。サールは同じ論文で、少なくともこの論文の範囲では、弱いAIの主張に異論はないと述べています。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目2 人工知能分野で議論される問題)
- John R. Searle, Minds, Brains, and Programs, Behavioral and Brain Sciences 3(3) (1980)
- Stanford Encyclopedia of Philosophy, The Chinese Room Argument
- Roger Penrose, The Emperor's New Mind: Concerning Computers, Minds, and the Laws of Physics, Oxford University Press (1989)