1行定義
エキスパートシステムとは、専門家の知識をif-thenルールなどの形で蓄え、推論によって専門家のように判断や助言を行うコンピュータシステムのことです。
くわしく
エキスパートシステムは、1980年代の第2次AIブームの中心となった技術です。「専門家の知識を大量に与えれば、コンピュータも専門家のように判断できる」という考え方にもとづきます。
仕組み
主に次の部分からなります。
- 知識ベース:専門家から聞き取った知識を、「もし〜ならば、〜である」というif-thenルールなどの形でためたもの。
- 推論エンジン:知識ベースのルールを組み合わせて、結論を導く部分。
- ユーザーインタフェース:利用者が事実を入力し、結論やその理由を受け取る部分。
推論には2つの進め方があります。わかっている事実からルールを順にあてはめて結論に進む前向き推論と、結論の候補から出発して、それを支える条件を確かめていく後ろ向き推論です。どのルールを使ったかをたどれるため、結論の理由を説明しやすいことが特徴です。
代表例
- DENDRAL(1960年代〜):質量分析のデータから、有機化合物の構造を推定しました。最初期のエキスパートシステムです。
- マイシン(MYCIN)(1970年代):感染症の原因菌を推定し、適した抗生物質を提案しました。
- XCON(R1):DEC社のコンピュータの構成を決める作業を支援し、1980年ごろから実務で使われました。
限界
専門家の知識には、言葉にしにくいものが多くあります。聞き取ってルールにする作業には大きな手間がかかりました。これを知識獲得のボトルネックといいます。
ルールが増えると、矛盾の管理や保守も難しくなりました。ルールにない状況や、常識が必要な判断にも対応できません。こうした限界から、知識を体系的に整理するオントロジーの研究や、データから規則を学ぶ機械学習へと関心が移っていきました。
覚え方
「知識ベースは専門家のノート、推論エンジンはそれを読み解く頭」と覚えます。
G検定での出題
出題のされ方
知識ベースと推論エンジンからなる構成、DENDRALやマイシン(MYCIN)などの代表例、知識獲得のボトルネックに代表される限界が問われます。第2次AIブームとの対応も問われます。
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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エキスパートシステムが盛んに開発・導入されたのは、1980年代を中心とする第2次AIブームの時期である。
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答え ◯ 正しい
知識をコンピュータに与えて問題を解かせる考え方が中心となった時期です。第1次AIブームは探索・推論、第3次AIブームは機械学習が中心です。
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前向き推論では、すでにわかっている事実から出発し、条件が合うルールを次々にあてはめて結論を導く。
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答え ◯ 正しい
結論の候補から出発し、それを支える条件をさかのぼって確かめるのが後ろ向き推論です。
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エキスパートシステムは研究段階にとどまり、企業の業務で実際に使われた例はなかった。
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答え × 誤り
DEC社のXCON(R1)は、コンピュータの構成を決める作業を支援するシステムとして、1980年ごろから実務で使われました。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目4 知識表現とエキスパートシステム)
- Robert K. Lindsay, Bruce G. Buchanan, Edward A. Feigenbaum, Joshua Lederberg, DENDRAL: A case study of the first expert system for scientific hypothesis formation, Artificial Intelligence 61(2), 209–261 (1993)
- Bruce G. Buchanan, Edward H. Shortliffe (eds.), Rule-Based Expert Systems: The MYCIN Experiments of the Stanford Heuristic Programming Project (Addison-Wesley, 1984)
- John McDermott, R1: A rule-based configurer of computer systems, Artificial Intelligence 19(1), 39–88 (1982)