1行定義
DENDRALとは、1965年にスタンフォード大学で始まった、質量分析のデータなどから有機化合物の分子構造を推定するエキスパートシステムのことです。
くわしく
DENDRALは、1965年にアメリカのスタンフォード大学で始まった研究プロジェクトと、そこで作られたシステムです。計算機科学者のエドワード・ファイゲンバウム、ノーベル賞を受けた遺伝学者のジョシュア・レダーバーグ、ブルース・ブキャナンらが、同大学の質量分析の研究室と共同で開発しました。最初のエキスパートシステムとされています。
何をしたのか
未知の有機化合物を質量分析計にかけると、分子が壊れてできた断片の重さの分布(質量スペクトル)が得られます。DENDRALは、このデータなどから元の分子の構造を推定しました。化学者が頭の中で行っていた推理を、コンピュータで再現しようとしたものです。
仕組み
推論は、計画・生成・テストの3段階で進みます。
- 計画:専門家の規則を使い、データから「この部分構造を含むはず」といった条件を導く
- 生成:原子のつなぎ方として可能な構造のうち、条件を満たす候補だけを作る
- テスト:候補ごとに予想される測定データを求め、実際のデータと比べて順位を付ける
分子の壊れ方などの知識は、「この部分構造があれば、この位置で切れやすい」といったルールの形で書かれました。
示したこと
DENDRALは、知識を与えた特定の化合物群では、専門家に匹敵する性能を示しました。ここから、問題を解く力は推論の方法の一般性よりも、その分野の専門知識から生まれる、という考え方が広まりました。この考え方は、1970年代のマイシン(MYCIN)や、1980年代の第2次AIブームで数多く作られたエキスパートシステムへ受け継がれました。
一方で、専門家から知識を聞き出してルールにする作業には大きな手間がかかりました。そこで、構造がわかっている分子とその質量スペクトルから規則を自動で導くMeta-DENDRALも作られました。
覚え方
「DENDRALは化学、MYCINは医療」と、対象の分野で区別して覚えます。
G検定での出題
出題のされ方
化学の分野で分子構造を推定したこと、MYCINより早い最初期のエキスパートシステムであること、分野固有の知識が性能を決めるという考え方との関係が問われます。MYCINと対象分野を入れ替えた形でも問われます。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| DENDRALこのページの用語 | 1965年にスタンフォード大学で始まった、質量分析のデータなどから有機化合物の分子構造を推定するエキスパートシステム |
| マイシン(MYCIN) | 1970年代にスタンフォード大学で開発された、細菌感染症の原因菌を推定し、適した抗生物質を提案するエキスパートシステム |
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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DENDRALは、感染症の患者の検査結果から原因となる細菌を推定し、適した抗生物質を提案するシステムである。
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答え × 誤り
これはMYCINの説明です。DENDRALは、質量分析のデータなどから有機化合物の分子構造を推定する、化学の分野のシステムです。
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DENDRALは、条件を満たす分子構造の候補を生成し、それぞれから予想される測定データを実際のデータと比べて、候補を評価した。
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答え ◯ 正しい
計画・生成・テストの3段階で推論しました。専門家の知識で候補を絞り込むことで、膨大な組合せをすべて調べずに済むようにしました。
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Meta-DENDRALは、構造がわかっている分子とその質量スペクトルの組から、分子が質量分析計の中で壊れるときの規則を推定しようとした。
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答え ◯ 正しい
知識を人から聞き取る代わりに、データから規則を自動で導く試みでした。知識の獲得がシステムづくりのボトルネックになるという問題意識から生まれました。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目4 知識表現とエキスパートシステム)
- Edward A. Feigenbaum, The Art of Artificial Intelligence: Themes and Case Studies of Knowledge Engineering, IJCAI 1977, 1014–1029 (3.1 DENDRAL、3.2 META-DENDRAL)
- Robert K. Lindsay, Bruce G. Buchanan, Edward A. Feigenbaum, Joshua Lederberg, DENDRAL: A case study of the first expert system for scientific hypothesis formation, Artificial Intelligence 61(2), 209–261 (1993)