1行定義
マハラノビス距離とは、データのばらつきと変数どうしの相関を考慮して、ある点がデータの集まりの中心からどれだけ離れているかを測る距離のことです。
くわしく
マハラノビス距離は、「その点が、データの集まりの中でどれくらい珍しい位置にあるか」を測る距離です。インドの統計学者マハラノビスが、1936年の論文で一般的な形を示しました。ふつうの直線距離(ユークリッド距離)と違い、データのばらつきと相関を考えに入れます。
ばらつきを考える
変数が1つなら、マハラノビス距離は「平均から標準偏差いくつ分離れているか」です。たとえば平均170cm、標準偏差5cmの身長なら、180cmの人の距離は(180 − 170) / 5 = 2です。同じ10cmの差でも、標準偏差が10cmの集団なら距離は1です。標準偏差で割るため、cmとkgのように単位の違う変数も同じ物差しで比べられます。
相関を考える
変数が複数なら、平均ベクトルμと共分散行列Σを使い、D = √((x − μ)ᵀ Σ⁻¹ (x − μ))で求めます。共分散行列の逆行列が、ばらつきと相関の両方を補正します。
身長と体重を標準化(平均0、標準偏差1)し、相関係数ρが0.8だったとします。このときD² = (x² − 2ρxy + y²) / (1 − ρ²)です。
- 点A(身長も体重も+1):
D² = (1 − 1.6 + 1) / 0.36 ≈ 1.11で、Dは約1.05 - 点B(身長は+1、体重は−1):
D² = (1 + 1.6 + 1) / 0.36 = 10で、Dは約3.16
ユークリッド距離はどちらも√2(約1.41)です。しかし、平均より背が高いのに体重は軽い点Bは、相関の傾向に逆らう珍しい点なので、距離が大きくなります。
異常検知での使われ方
正常時のデータから平均と共分散行列を求めておき、新しいデータの距離が大きければ異常と判定します。相関のある複数のセンサー値をまとめて評価できます。品質工学のMT法(マハラノビス・タグチ法)も、この考え方を使います。
注意点もあります。外れ値が混じると平均や共分散行列の推定がゆがむため、外れ値に強い推定法を使うことがあります。また、変数の数に比べてデータが少ないと、共分散行列の逆行列を求められないことがあります。
覚え方
「標準偏差で割り、相関のゆがみを直した距離」と覚えます。
G検定での出題
出題のされ方
ばらつきと相関を考慮する点でのユークリッド距離との違い、共分散行列の逆行列を使う計算の考え方、正常時のデータからの離れ具合で判定する異常検知での使われ方が問われます。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| マハラノビス距離このページの用語 | データのばらつきと変数どうしの相関を考慮して、ある点がデータの集まりの中心からどれだけ離れているかを測る距離 |
| ユークリッド距離 | 各座標の差を2乗して足し合わせ、その平方根をとって求める、2つの点を結ぶ直線の長さ |
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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共分散行列が単位行列のとき、マハラノビス距離はユークリッド距離と一致する。
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答え ◯ 正しい
各変数の分散が1で、相関がない場合です。ばらつきの補正も相関の補正も働かないため、ふつうの直線距離と同じになります。
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正の相関がある2つの変数を標準化したデータでは、点(1, 1)のほうが点(1, −1)よりも、中心(0, 0)からのマハラノビス距離が大きい。
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答え × 誤り
(1, 1)は相関の傾向に沿ったずれで、よく見られる位置なので距離は小さくなります。傾向に逆らう(1, −1)のほうが珍しく、距離が大きくなります。
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身長(cm)と体重(kg)のデータで、身長の単位をmに変えて平均と共分散行列を計算し直しても、マハラノビス距離の値は変わらない。
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答え ◯ 正しい
単位を変えると、平均からの差も標準偏差も同じ倍率で変わり、割り算で打ち消し合います。単位によって値が変わるユークリッド距離との違いです。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目37 AIに必要な数理・統計知識)
- P. C. Mahalanobis, On the Generalised Distance in Statistics, Proceedings of the National Institute of Sciences of India 2, 49–55 (1936)(Sankhya A 80 Suppl 1, 1–7 (2018)に再録)
- scikit-learn Examples, Robust covariance estimation and Mahalanobis distances relevance