結論
最小二乗法は、実測値と予測値の差(残差)の2乗の和が最も小さくなるようにパラメータを決める方法で、確率分布を仮定しなくても計算できます。最尤法は、データが従う確率分布を仮定し、手元のデータが得られる確率(尤度)が最も大きくなるようにパラメータを決める方法で、誤差が独立に同じ正規分布に従うと仮定した回帰では、最小二乗法と同じ推定値になります。
比較表
| 観点 | 最小二乗法 | 最尤法 |
|---|---|---|
| 英語 | least squares method | maximum likelihood estimation(MLE) |
| パラメータを決める基準 | 残差の2乗の和を最小にする | 尤度(そのデータが得られる確率)を最大にする |
| 確率分布の仮定 | 不要。当てはまりの基準だけで計算できる | 必要。正規分布やベルヌーイ分布など、データが従う分布を先に決める |
| 主な対象 | 回帰(数値の予測)の係数の推定 | 回帰、分類、分布のパラメータの推定など、確率モデル全般 |
| 計算のしかた | 線形回帰なら、偏微分して0とおいた式から解を直接求められる | 対数尤度を最大にする。ロジスティック回帰などでは解を式で直接求められず、繰り返し計算で求める |
| 機械学習の誤差関数との対応 | 平均二乗誤差(MSE)の最小化と同じ | 負の対数尤度の最小化。回帰で正規分布を仮定すれば二乗誤差、分類では交差エントロピーになる |
| 弱点 | 2乗するため、外れ値に引きずられやすい | 仮定した分布が実態と合わないと推定がずれる。データが少ないと手元のデータに合わせすぎる |
| シラバス項目 | 技術分野 項目37 AIに必要な数理・統計知識(キーワード「最小二乗法」) | 技術分野 項目37 AIに必要な数理・統計知識(キーワード「最尤法」) |
| G検定での問われ方 | 残差の2乗の和を最小にするという定義、回帰直線の係数の計算、外れ値に弱い理由 | 尤度の意味、対数尤度を使う理由、ロジスティック回帰の係数の求め方、最小二乗法との関係 |
最終確認日:2026年11月1日
それぞれの説明
最小二乗法と最尤法は、どちらもデータからモデルのパラメータを決める推定の方法です。違うのは、何をもって「よく当てはまっている」とみなすかです。
最小二乗法
最小二乗法は、各データの実測値と予測値の差(残差)を2乗し、その合計が最も小さくなるパラメータを選びます。2乗するのは、プラスとマイナスの残差が打ち消し合わないようにするためです。データの背後にある確率分布を考えなくても、この基準だけで計算できます。線形回帰では、解を式の形で直接求められます。
一方で、大きく外れた値ほど2乗で強く効くため、外れ値に引きずられやすい性質があります。
最尤法
最尤法は、まずデータがどんな確率分布から生まれたかを仮定します。そのうえで、手元のデータが得られる確率(尤度)が最も大きくなるパラメータを選びます。コインの表が出る確率ならベルヌーイ分布、測定値の誤差なら正規分布というように、分布を選ぶところから始まります。
データが多いと、確率を掛け合わせた尤度は極端に小さな値になります。そこで実際には、積を和に直せる対数尤度を最大にします。分布を取り替えればさまざまなモデルに使えるのが強みで、ロジスティック回帰の係数も最尤法で求めます。分類で交差エントロピーを最小にするのも、最尤法と同じ考え方です。
2つが一致する条件
回帰で、誤差が互いに独立に、平均0・分散一定の正規分布に従うと仮定します。このとき対数尤度を書き出すと、パラメータに関係する部分は、残差の2乗の和に負の定数を掛けた形になります。尤度を最大にすることと、残差の2乗の和を最小にすることが同じ問題になり、2つの方法は同じ推定値を与えます。
この関係から、最小二乗法は「誤差に正規分布を仮定した最尤法」と読み替えられます。逆に、誤差に別の分布を仮定すれば、最尤法の答えは一般に最小二乗法と一致しなくなります。
見分けるコツ
- 「2乗の和を最小にする」なら最小二乗法、「データが得られる確率(尤度)を最大にする」なら最尤法です。何を基準にし、それを最小にするのか最大にするのかで見分けます。
- 「確率分布を仮定する」「ベルヌーイ分布」「ロジスティック回帰の係数」が出てきたら最尤法を考えます。分布の話がなく、残差だけで決めていれば最小二乗法です。
- 「2つの答えは常に同じ」も「まったく無関係」も誤りです。同じ推定値になるのは、誤差が互いに独立に、平均0・分散一定の正規分布に従うと仮定した場合です。
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
-
最小二乗法で回帰直線を求めるだけなら、誤差が従う確率分布を仮定しなくても計算できる。
答えを見る
答え ◯ 正しい
最小二乗法は「残差の2乗の和を最小にする」という基準だけで解が決まります。最尤法は、尤度を書き出すために、データが従う確率分布を先に決める必要があります。
-
回帰係数を最尤法で推定すると、誤差にどのような分布を仮定した場合でも、最小二乗法と同じ推定値になる。
答えを見る
答え × 誤り
同じになるのは、誤差が互いに独立に、平均0・分散一定の正規分布に従うと仮定した場合です。たとえば誤差にラプラス分布を仮定すると、最尤法は残差の絶対値の和を最小にする推定になります。
-
尤度を最大にするパラメータの値と、尤度の対数をとった対数尤度を最大にするパラメータの値は一致する。
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答え ◯ 正しい
対数は単調に増える関数なので、最大になる位置は変わりません。積が和に変わり、値が極端に小さくなるのも防げるため、実際の計算では対数尤度を使います。
関連問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目37 AIに必要な数理・統計知識)
- Ian Goodfellow, Yoshua Bengio, Aaron Courville, Deep Learning, MIT Press (2016) (5.5 Maximum Likelihood Estimation、5.5.1 Conditional Log-Likelihood and Mean Squared Error)
- NIST/SEMATECH e-Handbook of Statistical Methods (4.4.3.1 Least Squares)
- R. A. Fisher, On the Mathematical Foundations of Theoretical Statistics, Philosophical Transactions of the Royal Society of London. Series A 222, 309–368 (1922)
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