結論
適合率は、陽性と予測したもののうち実際に陽性だった割合で、誤検知の少なさを表します。再現率は、実際に陽性のもののうち陽性と予測できた割合で、見逃しの少なさを表します。
比較表
| 観点 | 適合率 | 再現率 |
|---|---|---|
| 英語 | precision | recall |
| 計算式 | TP / (TP + FP) | TP / (TP + FN) |
| 分母(どこから見るか) | 陽性と予測したデータ | 実際に陽性のデータ |
| 減らしたい誤り | 偽陽性(誤検知) | 偽陰性(見逃し) |
| 重視する場面の例 | 迷惑メールの判定(普通のメールを誤って隔離したくない) | 病気の検査や不良品の検出(陽性を見逃したくない) |
| 陽性と判定する閾値を上げると | 上がりやすい | 下がりやすい |
| 別の呼び方 | 陽性予測値(PPV) | 感度、真陽性率 |
| シラバス項目 | 技術分野 項目10 モデルの選択・評価 | 技術分野 項目10 モデルの選択・評価 |
最終確認日:2026年10月30日
それぞれの説明
適合率と再現率は、どちらも混同行列の件数から計算する分類モデルの評価指標です。陽性は、見つけたいほうのクラスを指します。TPは真陽性、FPは偽陽性(誤検知)、FNは偽陰性(見逃し)の件数です。
適合率
適合率は、「陽性と言ったときに、どれだけ当たっていたか」を表します。迷惑メールの判定で、迷惑メールと判定した100通のうち90通が本当に迷惑メールなら、適合率は0.9です。普通のメールを迷惑メールに振り分けると、大事な連絡を見落とすおそれがあります。こうした誤検知の害が大きい場面で重視します。
再現率
再現率は、「本当の陽性を、どれだけ取りこぼさずに見つけたか」を表します。病気の検査で、実際の患者50人のうち45人を陽性と判定できたら、再現率は0.9です。見逃した5人は、治療を始めるのが遅れるおそれがあります。見逃しの害が大きい場面で重視します。
2つの関係
陽性と判定する基準(閾値)を厳しくすると、自信のあるものだけを陽性と判定するので、適合率は上がりやすくなります。その代わり、判定から漏れる陽性が増えて、再現率は下がりやすくなります。基準をゆるめると、逆の動きになります。
このトレードオフがあるため、片方だけでモデルを評価すると判断を誤ります。両方のバランスを1つの数値で見たいときは、2つの調和平均であるF値を使います。陰性も含めた全体の当たり具合を表す正解率は、陽性が少ない不均衡なデータでは高く出やすいので、適合率・再現率と合わせて読みます。
見分けるコツ
- 定義の主語で見分けます。「陽性と予測したもののうち」なら適合率、「実際に陽性のもののうち」なら再現率です。
- どちらの誤りが困るかで選びます。誤検知の害が大きいなら適合率、見逃しの害が大きいなら再現率を重視します。
- 日本語の「精度」は、正解率と適合率のどちらの意味でも使われます。問題文では、言葉ではなく定義の文で確かめます。
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
-
評価データに陽性が含まれるとき、すべてのデータを陽性と予測するモデルの再現率は1になる。
答えを見る
答え ◯ 正しい
見逃し(FN)が0になるので、再現率はTP / (TP + 0) = 1です。一方、適合率はデータ全体に占める陽性の割合まで下がります。
-
適合率の分母は、実際に陽性であるデータの件数(TP + FN)である。
答えを見る
答え × 誤り
適合率の分母は、陽性と予測した件数(TP + FP)です。実際に陽性である件数(TP + FN)を分母にするのは再現率です。
-
実際の陽性に対する予測結果が同じなら、陰性のデータがいくら増えても再現率は変わらない。
答えを見る
答え ◯ 正しい
再現率はTPとFNだけで決まり、陰性のデータは計算に入りません。陰性が増えて誤検知(FP)が増えたときに下がるのは、適合率のほうです。
関連問題
出典
ほかの違い比較
- アジャイルとウォーターフォールの違い 進め方とAI開発での使い分け
- 赤池情報量規準(AIC)とベイズ情報量規準(BIC)の違い 罰則の重さ
- バギングとブースティングの違い 並列か逐次か、減らす誤差の違い
- バッチ正規化とレイヤー正規化の違い 平均と分散を計算する範囲の違い
- バッチ学習・ミニバッチ学習とオンライン学習の違い 更新回数とぶれ
- BERTとGPTの違い エンコーダとデコーダ、学習課題の違い
- CBOWとスキップグラムの違い 予測の向きと学習の速さ
- 分類問題と回帰問題の違い 出力の形で見分けるコツと評価指標
- CNN・RNNとTransformerの違い 得意なデータと計算の並列性
- 協調フィルタリングとコンテンツベースフィルタリングの違い 仕組み
- 共分散と相関係数の違い 式の関係と単位・値の範囲
- データ汚染とAdversarial Attackの違い 学習時か推論時かと対策
- 決定木とランダムフォレストの違い 解釈のしやすさと精度・安定性
- 深さ優先探索と幅優先探索の違い 調べる順番・最短解・メモリ
- 営業秘密と限定提供データの違い 3つの要件と刑事罰の有無
- Faster R-CNNとYOLOの違い 2段階型と1段階型、速度と精度
- GANと拡散モデル(Diffusion Model)の違い 学習と生成の仕組み
- GANとVAEの違い 識別器の有無と学習の仕組み
- GDPRと個人情報保護法の違い 法的根拠・本人の権利・制裁金
- 勾配降下法と誤差逆伝播法の違い 勾配を使う側と求める側
- グリッドサーチとランダムサーチの違い 試行回数の決まり方と効率
- ホールドアウト検証と交差検証の違い 分割回数・計算量・使い分け
- 画像分類(物体識別)と物体検出の違い 出力の形と使い分け
- 委託・第三者提供と共同利用の違い 同意の要否と受け手が使える範囲
- k-means法と階層的クラスタリングの違い クラスタ数を決める時期と計算量
- 個人情報・個人データと保有個人データの違い 範囲の入れ子とかかる義務
- 個人情報と個人識別符号の違い 包含関係と当たる例・当たらない例
- L1正則化とL2正則化の違い 罰則の形と重みが0になるか
- 最小二乗法と最尤法の違い 推定の基準と結果が一致する条件
- LIMEとSHAPの違い 局所近似とシャープレイ値の使い分け
- LSTMとGRUの違い ゲートの数と記憶セルの有無
- 機械学習とディープラーニングの違い 包含関係と特徴量の決め方
- 平均絶対値誤差(MAE)と平均二乗誤差(MSE)の違い 外れ値への強さ
- 正規化と正則化の違い 目的と代表的な手法を表で整理
- 主成分分析(PCA)と特異値分解(SVD)の違い 目的と計算の関係
- 主成分分析(PCA)とt-SNEの違い 線形か非線形か、保つ構造の違い
- プルーニング・量子化と蒸留の違い 何を減らすかと元モデルの扱い
- Q学習とSARSAの違い 更新式の1か所と方策オン・オフ
- RNNとLSTMの違い 記憶セルと勾配消失の起きにくさ
- Self-AttentionとSource-Target Attentionの違い Q・K・Vの出どころ
- セマンティック・インスタンスとパノプティックの違い 背景と個体の扱い
- 新規性と進歩性の違い 比べ方とAI発明での論点
- シグモイド関数とソフトマックス関数の違い 出力の合計と使い分け
- ソフトローとハードローの違い 法的拘束力の有無と日本・EUの例
- 強いAIと弱いAIの違い 心をもつと考えるかの違い
- 教師あり学習・教師なし学習と強化学習の違い 学習の手がかりと代表例
- 特許権と著作権の違い 発生・保護対象・期間とAIでの使い分け
- 匿名加工情報と仮名加工情報の違い 加工の程度と第三者提供の可否
- 転移学習とファインチューニングの違い 重みを固定するか更新するか
- 請負契約と準委任契約の違い 完成義務とAI開発での使い分け
- Zero-shotとFew-shotの違い 与える例の数と重みを更新しない点