結論
請負契約は、仕事の完成を約束し、その結果に対して報酬が支払われる契約です。準委任契約は、完成ではなく事務の処理を約束する契約で、受託者は善良な管理者の注意をもって作業する義務を負いますが、仕事を完成させる義務は負いません。
比較表
| 観点 | 請負契約 | 準委任契約 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 民法632条以下 | 民法656条(委任の規定を準用) |
| 約束するもの | 仕事の完成 | 事務の処理 |
| 完成義務 | あり | なし(善管注意義務を負う) |
| 報酬 | 仕事の結果に対して支払う。目的物の引渡しが必要なら、引渡しと同時に支払う | 報酬は特約で定め、原則として事務の処理後に支払う。成果に対して支払う成果完成型も選べる(648条の2) |
| 成果物が契約の内容に合わないとき | 契約不適合責任を負う(追完、報酬の減額、損害賠償、解除) | 契約不適合責任はない。善管注意義務に反していれば債務不履行責任を負う |
| 途中での解除 | 注文者は、完成前ならいつでも損害を賠償して解除できる | 各当事者がいつでも解除できる(相手方に不利な時期の解除などは損害賠償が必要) |
| 再委託 | 原則として自由(契約で制限できる) | 委任者の許諾か、やむを得ない事由が必要(644条の2) |
| AI開発での位置づけ | 仕様と検収基準を事前に固められる開発に向く | 性能を事前に約束しにくい学習済みモデルの開発になじみやすい |
| シラバス項目 | 法律・倫理分野 項目6 AI開発委託契約 | 法律・倫理分野 項目6 AI開発委託契約 |
最終確認日:2026年10月30日
それぞれの説明
請負契約
請負契約は、仕事を完成させることを約束する契約です(民法632条)。建物の建築や、仕様が決まったシステムの開発が典型例です。請負人は完成義務を負い、報酬は仕事の結果に対して支払われます。
引き渡した成果物が契約の内容に合わない場合、注文者は修補などの追完、報酬の減額、損害賠償、解除を求められます。これを契約不適合責任と呼びます。注文者が不適合を知ってから1年以内に請負人へ通知しないと、原則としてこれらを求められなくなります。
準委任契約
準委任契約は、法律行為ではない事務の処理を任せる契約です(民法656条)。委任の規定が準用されます。受託者は完成義務を負わず、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務(善管注意義務)を負います。コンサルティングや、作業時間に応じて報酬を払う開発支援が典型例です。
2020年4月施行の改正民法で、事務の処理によって得られる成果に対して報酬を払う成果完成型が明文化されました(648条の2)。成果に報酬を払う形でも、完成義務を負わない点は変わりません。
AI開発ではどちらを使うか
学習済みモデルの性能は、学習に使うデータに大きく左右されます。そのため、契約の時点で特定の精度を必ず達成すると約束するのは難しい場合が多くあります。経済産業省の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン(AI編)」は、こうした開発は完成義務を伴う請負型になじみにくく、準委任型が親和的だという考え方を示しています。あわせて、アセスメント、PoC、開発、追加学習と段階を分けて契約し、各段階の結果を見て次に進むかを決める探索的段階型の進め方を示しています。
見分けるコツ
- 「完成させる約束」か「注意を尽くして作業する約束」かで見分けます。前者が請負、後者が準委任です。
- 成果物に報酬を払うから請負、とは限りません。成果に対して報酬を払う成果完成型の準委任もあるため、完成義務の有無で判断します。
- 契約の名前ではなく中身で判断されます。「業務委託契約」という名前でも、内容によって請負にも準委任にもなります。
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
-
準委任契約の受託者は、仕事を完成させる義務は負わないが、善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負う。
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答え ◯ 正しい
準委任には委任の規定が準用され、受任者は善管注意義務を負います(民法644条、656条)。注意を尽くしていれば、期待した成果が出なくても直ちに責任を負うわけではありません。
-
成果物の引渡しに対して報酬を支払うと定めた契約は、必ず請負契約になる。
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答え × 誤り
2020年施行の改正民法で、成果に対して報酬を支払う成果完成型の準委任が明文化されました(648条の2)。請負かどうかは、仕事の完成義務を負うかで決まります。
-
請負契約で引き渡されたシステムに契約の内容に合わない不具合があっても、注文者は修補を求めることはできず、損害賠償を請求できるだけである。
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答え × 誤り
請負には売買の契約不適合責任の規定が準用されます(民法559条)。注文者は、修補などの追完、報酬の減額、損害賠償、解除を求められます。
関連問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (法律・倫理分野 項目6 AI開発委託契約)
- 民法(e-Gov法令検索) (559条、562条〜564条、632条〜634条、636条、637条、641条、643条、644条、644条の2、648条、648条の2、651条、656条)
- 経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン(AI編)」(2018年6月策定、2019年12月に1.1版) (契約の法的性質、探索的段階型の開発方式)
ほかの違い比較
- アジャイルとウォーターフォールの違い 進め方とAI開発での使い分け
- 赤池情報量規準(AIC)とベイズ情報量規準(BIC)の違い 罰則の重さ
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- バッチ学習・ミニバッチ学習とオンライン学習の違い 更新回数とぶれ
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- CNN・RNNとTransformerの違い 得意なデータと計算の並列性
- 協調フィルタリングとコンテンツベースフィルタリングの違い 仕組み
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