1行定義
オッカムの剃刀とは、ある現象を同じ程度に説明できるなら、必要以上の仮定を置かない、より単純な説明を選ぶべきだとする考え方のことです。
くわしく
オッカムの剃刀は、「説明に要らないものはそり落とせ」という考え方です。14世紀に活躍したイングランドの哲学者、オッカムのウィリアムの名にちなみます。日本語では「ケチの原理」「思考節約の原理」とも呼ばれます。
もとの意味
よく知られた言い回しは「存在を必要以上に増やしてはならない」です。考え方はオッカムのものですが、この言い回しそのものは彼の著作には見当たりません。
機械学習での意味
機械学習では、「データを同じ程度に説明できるなら、より単純なモデルを選ぶ」という指針として使われます。
たとえば、10個のデータ点に直線と9次式を当てはめたとします。9次式は10個の点をすべて通せますが、偶然のばらつきまで拾うため、新しいデータでは大きく外れがちです。これが過学習です。単純なモデルを優先することは、汎化性能を守る方向に働きます。
この考え方は、ほかの手法にも入っています。AICやBICは、パラメータ数に罰則を与えてモデルを選びます。正則化は、重みが大きくなりすぎないように抑えて、モデルの複雑さを制限します。
限界
オッカムの剃刀は経験にもとづく指針で、精度の高さを保証するものではありません。Domingosは1999年の論文で、精度が同じなら分かりやすい単純なモデルを選ぶ、という意味では妥当だとしました。一方で、「単純なほど精度が高い」という主張は、普遍的な原則としては成り立たないと論じています。ディープラーニングでは、パラメータが非常に多いモデルが高い汎化性能を示すこともあります。最終的には、検証用のデータで性能を確かめて選びます。
ノーフリーランチの定理との違い
ノーフリーランチの定理は、「すべての問題で平均すると、どの手法の性能も同じになり、万能な手法はない」という主張です。単純なモデルを勧める原則ではありません。
覚え方
「同じくらい説明できるなら、余分な仮定はそり落とす」と覚えます。
G検定での出題
出題のされ方
単純なモデルを優先するという原則の中身と、過学習の防止やAIC・BICの罰則項との結びつき、ノーフリーランチの定理など別の原則との区別が、正誤の判断の形で問われます。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| オッカムの剃刀このページの用語 | ある現象を同じ程度に説明できるなら、必要以上の仮定を置かない、より単純な説明を選ぶべきだとする考え方 |
| ノーフリーランチの定理 | 考えうるすべての問題で平均すると、どの最適化や学習の手法も性能が等しくなり、万能な手法はないことを示した定理 |
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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オッカムの剃刀は、単純なモデルのほうが必ず予測精度が高くなることを数学的に証明した定理である。
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答え × 誤り
考え方の指針であり、定理ではありません。Domingosは1999年の論文で、単純さがそのまま精度の高さにつながるという解釈は、普遍的な原則としては成り立たないと論じています。
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オッカムの剃刀の名前は、14世紀に活躍したイングランド出身の哲学者、オッカムのウィリアムに由来する。
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答え ◯ 正しい
1287年ごろにイングランドで生まれ、1347年に没したフランシスコ会の修道士です。不要な仮定を剃刀でそり落とすというイメージから、この名で呼ばれます。
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AICやBICが、パラメータの多いモデルほど値を大きくする罰則項をもつのは、オッカムの剃刀の考え方を数式で表したものとみなせる。
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答え ◯ 正しい
当てはまりが同程度なら、罰則の小さい、つまりパラメータの少ないモデルが選ばれます。Schwarzも1978年の論文で、両方の規準を節約の原理を数式にしたものと位置づけています。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目10 モデルの選択・評価)
- Stanford Encyclopedia of Philosophy, William of Ockham (1.1 England、4.1 Ockham’s Razor)
- Pedro Domingos, The Role of Occam's Razor in Knowledge Discovery, Data Mining and Knowledge Discovery 3(4), 409–425 (1999)
- Gideon Schwarz, Estimating the Dimension of a Model, The Annals of Statistics 6(2), 461–464 (1978)
- Ian Goodfellow, Yoshua Bengio, Aaron Courville, Deep Learning, MIT Press (2016) (5.2 Capacity, Overfitting and Underfitting)