1行定義
発明とは、特許法上、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもののことです。
くわしく
特許を受けられるのは「発明」だけです。AIの成果を特許で守れるかを考えるときは、まず発明に当たるかを確かめます。特許法2条1項は、発明を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定めています。
定義の4つの要素
- 自然法則を利用している:物理や化学の法則などを利用していることです。自然法則そのもの、経済法則、ゲームのルールのような人為的な取決め、数学の公式、頭の中だけで行う精神活動は当たりません。
- 技術的思想である:知識として他人に伝えられる、客観的な技術であることです。個人の熟練によるコツや、絵画のような美的な創作物は当たりません。
- 創作である:新たに作り出したものであることです。自然界にあるものを見つけただけの発見は当たりません。
- 高度のもの:実用新案法の「考案」と区別するための要素です。
AIと発明
数式やアルゴリズムそのものは、自然法則を利用していないため発明に当たりません。一方、特許庁の審査基準や審査ハンドブックは、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されていれば、自然法則を利用した技術的思想の創作になるとしています。たとえば、学習済みモデルを使って画像や音声をコンピュータで処理する具体的な手順を示したプログラムは、発明になりえます。特許法では、プログラムも「物」に含まれます(2条3項1号)。
発明に当たっても、それだけで特許を受けられるわけではありません。産業上の利用可能性、新規性、進歩性などの要件も満たす必要があります。また、発明者の欄にAIの名称を書いた出願について、知的財産高等裁判所は2025年1月、特許法上の発明は自然人が発明者となるものに限られると判断しました。2026年3月に最高裁判所が上告を退け、この判断は確定しています。
覚え方
「自然法則を使い、他人に伝えられ、新たに作った、高度なもの」と4つに分けて覚えます。
G検定での出題
出題のされ方
数式、人為的な取決め、個人の技能などが発明に当たらない理由、ソフトウェアによる情報処理が発明になりうる条件、発明者が自然人に限られることを、AI開発の事例で判断させる形で問われます。
最新動向法改正やガイドラインの改訂はG検定の法律・倫理分野の最新動向にまとめています。
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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特許法上、プログラムは「物」に含まれ、プログラムの発明は物の発明として扱われる。
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答え ◯ 正しい
特許法2条3項1号は「物(プログラム等を含む。)」と定めています。そのため、プログラムをネットワーク経由で提供する行為も実施に当たります。
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新しい自然法則そのものを発見した場合、その法則自体について特許を受けることができる。
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答え × 誤り
発明は自然法則を「利用した」技術的思想の創作です。自然法則そのものや単なる発見は創作ではないため、発明に当たりません。
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特許法の「発明」と異なり、実用新案法の「考案」の定義には「高度のもの」という限定がない。
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答え ◯ 正しい
実用新案法2条1項は、考案を「自然法則を利用した技術的思想の創作」と定めています。「高度のもの」は、発明と考案を区別するための要素です。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (法律・倫理分野 項目3 特許法)
- 特許法(e-Gov法令検索) (2条1項・3項1号・4項、29条1項)
- 実用新案法(e-Gov法令検索) (2条1項)
- 特許庁「特許・実用新案審査基準」第III部第1章 発明該当性及び産業上の利用可能性(特許法第29条第1項柱書)
- 特許庁「特許・実用新案審査ハンドブック」附属書B「特許・実用新案審査基準」の特定技術分野への適用例 (第1章 コンピュータソフトウエア関連発明)
- ソフトウェア情報センター(SOFTIC)「最高裁がAI発明に関する発明者性をめぐる事件の上告を棄却」(2026年3月23日) (知財高裁2025年1月30日判決、最高裁第二小法廷2026年3月4日決定)