1行定義
進歩性とは、その技術分野の通常の知識をもつ者(当業者)が、出願前の公知技術から容易に発明できたものではないことを求める特許の要件のことです。
くわしく
進歩性は、新規性と並ぶ特許の中心的な要件です。出願前の技術と違う点があれば、新規性は認められます。しかし、その違いが、その分野の技術者なら簡単に思いつく程度のものであれば、独占を認める意味はありません。かえって、ほかの人が自然に進めるはずの改良を妨げてしまいます。そこで特許法29条2項は、出願前の技術から容易に発明できたものには特許を与えないとしています。
誰を基準にするか
基準になるのは、その技術分野の通常の知識をもつ人で、当業者と呼ばれます。出願人本人の能力や、特別に優れた研究者は基準にしません。判断の時点は特許出願の時です。
判断の流れ
特許庁の審査基準では、おおよそ次の順に判断します。
- 公知の発明の中から、論理付けに最も適したものを主引用発明として1つ選び、出願された発明との相違点を明らかにする。
- ほかの公知技術や技術常識を使って、当業者がその相違点に容易にたどり着けたと論理付けできるかを検討する。技術分野の関連性や課題の共通性などの動機付けがあることや、単なる設計変更にとどまることは、進歩性を否定する方向に働く。
- 論理付けできなければ、進歩性は認められる。できる場合も、引用発明より有利な効果や、組合せを妨げる阻害要因など、進歩性を肯定する方向の事情を含めて総合的に評価する。
2026年7月1日以降の審査に使われる改訂後の審査基準では、阻害要因があるだけで直ちに進歩性が認められるわけではなく、その程度も含めて評価することが明確にされました。
AIの出願で問題になる点
既存のシステムの計算部分を、単に機械学習のモデルに置き換えただけの発明は、進歩性が否定されやすくなります。一方、学習に使うデータの組合せなどを工夫し、公知技術からは予測できない顕著な効果が得られれば、進歩性が認められることがあります。
覚え方
新規性は「同じものがあるか」、進歩性は「簡単に思いつけるか」です。
G検定での出題
出題のされ方
新規性との違い、当業者を基準に判断すること、公知技術の単なる組合せや置き換えでは進歩性が否定されうることを、AIを使ったシステムの出願事例にあてはめる形で問われます。
最新動向法改正やガイドラインの改訂はG検定の法律・倫理分野の最新動向にまとめています。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 進歩性このページの用語 | その技術分野の通常の知識をもつ者(当業者)が、出願前の公知技術から容易に発明できたものではないことを求める特許の要件 |
| 新規性 | 発明が特許出願の前に公然知られたり、公然実施されたり、刊行物やインターネットで公開されたりしていないことを求める特許の要件 |
違いを表で比べる
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
-
進歩性の有無は、出願した本人の技術水準ではなく、その技術分野の通常の知識をもつ者(当業者)を基準に判断される。
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答え ◯ 正しい
特許法29条2項は「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者」を基準にしています。特別に優れた研究者や素人は基準になりません。
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進歩性は、出願の後に公開された論文も含めて、審査をする時点の技術水準と比べて判断される。
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答え × 誤り
判断の基準は特許出願の時です。出願の後に公開された技術をもとに、進歩性を否定することはできません。
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特許庁の審査では、出願前の公知の発明から1つを主引用発明として選び、出願された発明との相違点に当業者が容易に到達できたといえるか(論理付けできるか)を検討する。
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答え ◯ 正しい
審査基準が示す判断の手順です。ほかの公知技術(副引用発明)や技術常識を使って、主引用発明から出願された発明に至る筋道を説明できるかを確かめます。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (法律・倫理分野 項目3 特許法)
- 特許法(e-Gov法令検索) (29条1項・2項)
- 特許庁「特許・実用新案審査基準」第III部第2章第2節 進歩性
- 特許庁「審査基準の改訂について」(2026年6月25日改訂、2026年7月1日以降の審査に適用) (第III部第2章第2節 進歩性:阻害要因等に関する記載の明確化)
- 特許庁「AI関連技術に関する特許審査事例について」