1行定義
sim2realとは、シミュレータの中で学習した方策やモデルを、実世界のロボットなどに移して使うこと、またそのための技術のことです。
くわしく
sim2realは、simulation to realityを縮めた言葉です。シミュレータで学んだ成果を、現実の世界で使えるようにすることを指します。深層強化学習をロボットに応用するときの中心的な課題の1つです。
なぜシミュレータで学ぶのか
強化学習は、膨大な回数の試行錯誤で方策を学びます。実機で同じことをすると、長い時間がかかります。機械が壊れたり、周りを傷つけたりするおそれもあります。シミュレータなら、多数の環境を並列に、実時間より速く動かせます。
リアリティギャップ
ただし、シミュレータは現実を完全には再現できません。摩擦や物体の重さ、モーターの反応の遅れ、カメラ画像の照明や色合いなどが少しずつ異なります。この差をリアリティギャップと呼びます。シミュレータだけで最適化した方策は、この差のために実機で失敗しがちです。
主な対策
- シミュレータを現実に近づける:実機のモーターの特性や遅れを測り、シミュレータに反映します(システム同定)。
- ドメインランダマイゼーション:照明や摩擦などの条件をランダムに変えて学び、現実もその変化の1つとして扱えるようにします。
- ドメイン適応:シミュレータの画像を、GANなどで実際のカメラ画像に近い見た目に変換します。
- 実機での調整:少量の実機データで追加学習したり、既存の制御と組み合わせたりします。
実際には、これらを組み合わせます。Tanらは2018年に、モーターの特性と遅れを再現し、物理的な条件のランダム化も加えて、四足歩行ロボットにトロット(速歩)とギャロップ(襲歩)を学ばせました。OpenAIは同じ年、シミュレータだけで学習した方策で、5本指のロボットハンドに物体の向きを変えさせました。
オフライン強化学習との違い
オフライン強化学習は、過去に記録したデータだけで学び、新たな試行をしません。sim2realは、シミュレータの中で試行を重ねる点が異なります。
G検定での出題
出題のされ方
実機での試行は危険で費用もかかるためシミュレータで学ぶという動機、シミュレータと現実の差(リアリティギャップ)、ドメインランダマイゼーションなどの対策、オフライン強化学習との違いが問われます。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| sim2realこのページの用語 | シミュレータの中で学習した方策やモデルを、実世界のロボットなどに移して使うこと、またそのための技術 |
| オフライン強化学習 | 環境と新たにやり取りせず、過去に集めて保存したデータだけを使って方策を学習する強化学習の枠組み |
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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OpenAIは2018年、実機では学習を行わず、シミュレータの中だけで学習した方策で、人の手に似たロボットハンドに物体の向きを変えさせた。
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答え ◯ 正しい
5本指のShadow Dexterous Handを使った研究です。摩擦の大きさや物体の見た目などをシミュレータでランダムに変えながら学習し、その方策を実機に移しました。
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sim2realでは、シミュレータを現実に近づける工夫と、シミュレータの条件をあえてばらつかせる工夫は両立しないため、どちらか一方だけを使う。
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答え × 誤り
両方を組み合わせることもよくあります。Tanらの四足歩行ロボットの研究(2018年)では、モーターの特性や遅れをシミュレータで再現したうえで、物理的な条件のランダム化も加えました。
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sim2realの手法には、シミュレータで作った画像を、GANを使って実際のカメラ画像に近い見た目に変換し、学習に使うものがある。
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答え ◯ 正しい
ドメイン適応と呼ばれる方法です。Bousmalisらは、シミュレータのデータとドメイン適応を組み合わせ、物体をつかむ学習に必要な実機のデータを最大で50分の1に減らしました。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目29 深層強化学習)
- Josh Tobin, Rachel Fong, Alex Ray, Jonas Schneider, Wojciech Zaremba, Pieter Abbeel, Domain Randomization for Transferring Deep Neural Networks from Simulation to the Real World, IROS 2017
- Jie Tan, Tingnan Zhang, Erwin Coumans, Atil Iscen, Yunfei Bai, Danijar Hafner, Steven Bohez, Vincent Vanhoucke, Sim-to-Real: Learning Agile Locomotion For Quadruped Robots (2018)
- OpenAI (Marcin Andrychowicz et al.), Learning Dexterous In-Hand Manipulation (2018)
- Konstantinos Bousmalis et al., Using Simulation and Domain Adaptation to Improve Efficiency of Deep Robotic Grasping (2017)