1行定義
残差強化学習とは、既存の制御器の出力を土台にして、それだけでは足りない補正分(残差)だけを強化学習で学ぶ手法のことです。
くわしく
残差強化学習は、すでにある制御の仕組みに、強化学習で学んだ「補正」を足して性能を高める手法です。主にロボットの制御で使われます。2018年に、Tobias Johanninkらと、Tom Silverらがそれぞれ発表しました。Silverらは、残差方策学習(Residual Policy Learning)と呼んでいます。
考え方
工場のロボットは、物理的なモデルにもとづく従来の制御(フィードバック制御)で、多くの作業をこなせます。しかし、部品どうしが接触したり摩擦が働いたりする作業は、正確なモデルを作るのが難しく、従来の制御だけでは失敗しやすくなります。一方、強化学習でゼロから学ばせると、膨大な試行が必要で、学習の初めには危険な動きもします。
残差強化学習は、両者の得意な部分を組み合わせます。最終的な行動はu = π_H(s) + π_θ(s)です。π_Hは既存の制御器の出力、π_θは強化学習で学ぶ補正です。ここでの残差とは、既存の制御では足りない差分のことです。
利点
- 学習の初めから、既存の制御器がおおよその動きを担います。
- 学ぶ範囲が補正に限られるので、ゼロから学ぶより少ない試行で済みます。
- 報酬が疎で、強化学習だけでは解けない長い作業にも対応しやすくなります。
Johanninkらは、接触を伴うブロックの組み立て作業を、実機のロボットで学習させました。Silverらは、シミュレータ上の6つの操作課題で、もとの制御器を大きく上回る性能を示しました。
ResNetの残差学習との違い
名前は似ていますが、ResNetの残差学習は、層の入力と出力の差分を学ぶネットワーク構造の工夫です。残差強化学習は、制御器の出力に対する補正を学ぶ方法で、対象が異なります。「差分だけを学べば楽になる」という発想は共通しています。
覚え方
「ベテランの制御に、強化学習が手直しを足す」と覚えます。
G検定での出題
出題のされ方
既存の制御器の出力と学習した補正を足し合わせる仕組み、ゼロから学ぶより少ない試行で済む点、接触や摩擦を含むロボット制御での利用、ResNetの残差学習との区別が問われます。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 残差強化学習このページの用語 | 既存の制御器の出力を土台にして、それだけでは足りない補正分(残差)だけを強化学習で学ぶ手法 |
| ResNet | 数層ごとに入力を出力へ直接足し合わせるスキップ結合を使い、100層を超える深さでも学習できるようにしたCNN |
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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残差強化学習の「残差」は、ResNetと同じく、ニューラルネットワークの層の入力と出力の差を指す。
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答え × 誤り
ここでの残差は、既存の制御器の出力だけでは足りない分の補正です。ResNetの残差学習はネットワーク構造の工夫で、名前は似ていても指すものが違います。
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残差強化学習の土台にする既存の制御器は、それだけで作業をほぼ完璧にこなせるものでなければならない。
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答え × 誤り
想定しているのは、おおむね動くが完全ではない制御器です。Silverらは、モデルの誤りや調整のずれがある制御器でも、学んだ補正で性能が大きく上がることを示しました。
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残差強化学習を使うと、報酬が疎で手順の長い作業のように、強化学習だけでは解けない課題も解けることがある。
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答え ◯ 正しい
既存の制御器が作業の大筋を進めるので、報酬にたどり着く機会が増えます。Silverらは、強化学習だけでは解けなかった課題を解けることを示しました。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目29 深層強化学習)
- Tobias Johannink, Shikhar Bahl, Ashvin Nair, Jianlan Luo, Avinash Kumar, Matthias Loskyll, Juan Aparicio Ojea, Eugen Solowjow, Sergey Levine, Residual Reinforcement Learning for Robot Control, ICRA 2019, pp. 6023–6029
- Tom Silver, Kelsey Allen, Josh Tenenbaum, Leslie Kaelbling, Residual Policy Learning (2018) (Abstract)