1行定義
報酬成形とは、強化学習で本来の報酬に途中の手がかりとなる報酬を加えるなど、報酬の与え方を工夫して学習を進みやすくする方法のことです。
くわしく
報酬成形は、強化学習で「どのように報酬を与えるか」を工夫して、学習を進みやすくする方法です。英語ではreward shapingといいます。
なぜ必要か
強化学習のエージェントは、報酬を手がかりに行動を学びます。しかし、迷路のゴールに着いたときだけ報酬を与えるような課題では、報酬を得る機会がほとんどありません。このような状態を「報酬が疎(まばら)」といいます。報酬に出会うまでは、どの行動がよかったのか判断できず、学習がなかなか進みません。
そこで、ゴールに近づいたら少し報酬を与えるなど、途中の進み具合にも報酬を加えます。これが報酬成形です。課題についての人間の知識を、報酬の形でエージェントに伝える方法でもあります。
設計を誤ったときの危険
途中の報酬は、本来の目的とずれることがあります。たとえば部屋をきれいにしたいのに、掃除ロボットに「ごみを吸い込むたびに報酬」を与えると、ごみを吐き出しては吸い込む行動を学ぶおそれがあります。このように、設計者の意図と違う形で報酬を最大化してしまうことを、報酬ハッキングと呼びます。
最適な方策を変えない形
Andrew Ngらは1999年に、状態ごとに決めた値(ポテンシャル)Φ(s)を使い、途中の報酬をF = γΦ(s') − Φ(s)の形で与えれば、最適な方策が変わらないことを示しました。sは移動元、s'は移動先の状態、γは割引率です。たとえばゴールまでの距離にマイナスを付けた値をポテンシャルにすると、目的を変えずに手がかりだけを増やせます。逆に、この形でない途中の報酬は、課題によっては最適な方策を変えてしまいます。
RLHFとの違い
RLHFも報酬に関わる手法ですが、人間の比較評価から報酬モデルを学習する点が異なります。報酬成形は、設計者が自分で報酬の与え方を工夫する考え方です。
覚え方
「ゴールまでの道に、パンくずのような小さな報酬を置く」と覚えます。
G検定での出題
出題のされ方
目的を達成したときにしか報酬がない疎な報酬の課題での使い方、途中の報酬の設計を誤ったときに意図しない行動を学ぶ危険、人間の評価から報酬を学ぶRLHFとの区別が問われます。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 報酬成形このページの用語 | 強化学習で本来の報酬に途中の手がかりとなる報酬を加えるなど、報酬の与え方を工夫して学習を進みやすくする方法 |
| RLHF | 人間が出力どうしを比べて評価したデータで報酬モデルを作り、その報酬を使った強化学習で、モデルの出力を人間の好みに近づける手法 |
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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状態ごとに決めた値(ポテンシャル)Φを使い、途中の報酬を「割引率×移動先のΦ − 移動元のΦ」の形で与える報酬成形では、元の課題での最適な方策は変わらない。
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答え ◯ 正しい
Ngらが1999年に示した結果で、ポテンシャルにもとづく報酬成形と呼ばれます。この形に当てはまらない途中の報酬は、課題によっては最適な方策を変えてしまいます。
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報酬成形は、人間がモデルの応答どうしを比べた評価データから報酬モデルを学習し、その点数を報酬として使う手法である。
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答え × 誤り
これはRLHFの説明です。報酬成形は、設計者が課題についての知識をもとに報酬の与え方を工夫する方法で、報酬を人間の比較評価から学ぶものではありません。
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途中の報酬の与え方を誤ると、エージェントが本来の目的の達成よりも、途中の報酬を稼ぐことを優先する行動を学ぶことがある。
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答え ◯ 正しい
設計者の意図と違う形で報酬を最大化してしまうことを、報酬ハッキングと呼びます。途中の報酬は、本来の目的とずれていないかを確かめながら設計します。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目29 深層強化学習)
- Andrew Y. Ng, Daishi Harada, Stuart Russell, Policy Invariance Under Reward Transformations: Theory and Application to Reward Shaping, ICML 1999, pp. 278–287
- Dario Amodei, Chris Olah, Jacob Steinhardt, Paul Christiano, John Schulman, Dan Mané, Concrete Problems in AI Safety (2016) (4 Avoiding Reward Hacking)