1行定義
ベクトル自己回帰モデル(VARモデル)とは、複数の時系列データについて、各系列の値をすべての系列の過去の値で表し、まとめて予測するモデルのことです。
くわしく
ベクトル自己回帰モデル(VARモデル)は、自己回帰モデル(ARモデル)を複数の時系列に広げたモデルです。ARモデルが1つの系列を自分の過去の値だけで予測するのに対し、VARモデルは、いくつかの系列が過去の値を通じて互いに影響し合う関係を、まとめて表します。
式の形
所得x(t)と消費y(t)を例にします。1時点前の値を使うVAR(1)モデルは、次の2本の式の組です。
x(t) = c1 + a11·x(t-1) + a12·y(t-1) + ε1(t)y(t) = c2 + a21·x(t-1) + a22·y(t-1) + ε2(t)
変数ごとに1本ずつ式を立て、どの式の右辺にも、すべての変数の過去の値を入れます。a12は消費の過去の値が所得に与える影響、a21は所得の過去の値が消費に与える影響です。どの変数も、予測される側であると同時に、ほかの変数を説明する側でもあります。係数は、式ごとに最小二乗法で推定できます。
係数の数に注意
変数の数をK、使う過去の時点の数(ラグ)をpとすると、推定する係数は定数項を含めてK + p × K^2個です。各式に定数項1個と「K個の変数×p時点」の係数があり、その式がK本あるためです。K = 2、p = 1なら2 + 1 × 4 = 6個ですが、K = 4、p = 2では4 + 2 × 16 = 36個に増えます。
係数が多いほど、推定の誤差が予測に入り込みやすくなります。そのため、互いに関係のある少数の変数に絞ります。ラグの数は、BICなどの情報量規準で選ぶのが一般的です。
何に使うか
経済学者のシムズが1980年の論文でマクロ経済の分析に使うことを提唱し、広く使われるようになりました。複数の系列の同時予測のほか、ある変数の過去の値が別の変数の予測に役立つかを調べるグレンジャー因果性の検定や、ある変数の急な変化がほかの変数にどう波及するかを見る分析にも使われます。
G検定での出題
出題のされ方
ARモデルを複数の時系列に広げたモデルであることや、系列どうしが過去の値を通じて影響し合う関係を表せること、ARモデル・重回帰分析との使い分けが問われます。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| ベクトル自己回帰モデル(VARモデル)このページの用語 | 複数の時系列データについて、各系列の値をすべての系列の過去の値で表し、まとめて予測するモデル |
| 自己回帰モデル(ARモデル) | 時系列データのある時点の値を、同じ系列の過去の値に係数を掛けて足し合わせた式で表し、予測するモデル |
| 重回帰分析 | 2つ以上の説明変数を使い、目的変数をそれらに係数を掛けて足し合わせた1次式で表して分析・予測する線形回帰 |
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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変数が1つだけのVARモデルは、ARモデルと同じ形の式になる。
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答え ◯ 正しい
VARモデルは、ARモデルを複数の系列に広げたものです。変数が1つなら、自分の過去の値だけで表す式1本になり、ARモデルと一致します。
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変数が3つ、ラグが2のVARモデルで推定する係数の数は、定数項を含めて21個である。
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答え ◯ 正しい
各式に定数項1個と、3変数×2時点の6個の係数があり、計7個です。式が3本あるので7 × 3 = 21個です。
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VARモデルでラグを1つ増やしても、推定する係数は各式に1個ずつしか増えない。
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答え × 誤り
ラグを1つ増やすと、各式の右辺に、すべての変数の値が1時点分ずつ加わります。変数がK個なら各式でK個、全体ではK × K個増えます。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目7 教師あり学習)
- Rob J Hyndman, George Athanasopoulos, Forecasting: Principles and Practice, 3rd edition, OTexts (12.3 Vector autoregressions)
- Christopher A. Sims, Macroeconomics and Reality, Econometrica 48(1), 1–48 (1980)