1行定義
自己回帰モデル(ARモデル)とは、時系列データのある時点の値を、同じ系列の過去の値に係数を掛けて足し合わせた式で表し、予測するモデルのことです。
くわしく
自己回帰モデル(ARモデル)は、「昨日までの値から今日の値を予測する」ための時系列のモデルです。気温、来客数、電力需要のように、前の値と近い値が続きやすいデータに使います。早い例として、1927年に統計学者のユールが、太陽黒点数の周期的な変動の分析に用いました。
式の形
1時点前の値だけを使うAR(1)モデルは、y(t) = c + φ1·y(t-1) + ε(t)と書きます。cは定数、φ1は係数、ε(t)は予測できないばらつき(誤差)です。p時点前までの値を使うものをAR(p)モデルと呼び、pを次数といいます。
説明変数が自分自身の過去の値になった重回帰分析と考えると、理解しやすくなります。「自己」回帰という名前は、ここから来ています。
計算例
y(t) = 10 + 0.5·y(t-1)(誤差は省略)と推定できたとします。昨日の値が40なら、今日の予測は10 + 0.5 × 40 = 30です。予測値を次の入力に使って計算を繰り返すと、30、25、22.5と、10 ÷ (1 − 0.5) = 20に近づいていきます。この20が系列の平均です。
定常性の条件
ARモデルは、平均やばらつきが時間によって変わらない定常な系列を前提にします。AR(1)モデルでは、係数が−1 < φ1 < 1の範囲にあることが条件です。φ1の絶対値が1以上だと、系列は一定の平均のまわりにとどまりません。上昇し続けるような系列は、前の時点との差(階差)をとってから当てはめます。
関連するモデル
複数の系列が互いに影響し合う場合は、ベクトル自己回帰モデル(VARモデル)に広げます。また、文章を1語ずつ生成する言語モデルのように、自分の過去の出力から次を予測する生成のしかたも「自己回帰」と呼ばれます。
G検定での出題
出題のされ方
予測したい変数自身の過去の値を説明変数に使う時系列のモデルであることや、式に数値を当てはめた予測の計算、複数の系列を扱うVARモデルとの違いが問われます。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 自己回帰モデル(ARモデル)このページの用語 | 時系列データのある時点の値を、同じ系列の過去の値に係数を掛けて足し合わせた式で表し、予測するモデル |
| ベクトル自己回帰モデル(VARモデル) | 複数の時系列データについて、各系列の値をすべての系列の過去の値で表し、まとめて予測するモデル |
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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AR(1)モデルy(t) = c + φ1·y(t-1) + ε(t)で、係数φ1を1.2とすると、系列は一定の平均のまわりで安定して変動する。
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答え × 誤り
一定の平均のまわりで安定して変動する(定常である)ためには、−1 < φ1 < 1が必要です。φ1が1より大きいと、過去の値の影響が時間とともに増幅され、系列は発散します。
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AR(3)モデルは、予測したい時点の1時点前から3時点前までの、同じ系列の値を使って予測する。
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答え ◯ 正しい
AR(p)のpは次数で、何時点前までの値を使うかを表します。説明変数が自分の過去の値になった重回帰分析とみなせます。
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定常なAR(1)モデルy(t) = c + φ1·y(t-1) + ε(t)の平均はc ÷ (1 − φ1)で表され、c = 3、φ1 = 0.8のとき15である。
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答え ◯ 正しい
平均をmとすると、m = c + φ1 × mが成り立つので、m = c ÷ (1 − φ1)です。3 ÷ (1 − 0.8) = 3 ÷ 0.2 = 15になります。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目7 教師あり学習)
- Rob J Hyndman, George Athanasopoulos, Forecasting: Principles and Practice, 3rd edition, OTexts (9.3 Autoregressive models)
- G. Udny Yule, On a Method of Investigating Periodicities in Disturbed Series, with Special Reference to Wolfer's Sunspot Numbers, Philosophical Transactions of the Royal Society of London. Series A 226, 267–298 (1927)