1行定義
死者への敬意とは、AIで故人の声や姿を再現したり故人の情報を扱ったりするときに、故人の尊厳や生前の意思、遺族の心情を尊重すべきだという考え方のことです。
くわしく
死者への敬意は、亡くなった人の尊厳や生前の意思、遺族の気持ちを大切にすることです。生成AIを使えば、写真や録音、文章を学習させて、故人の顔や声、話し方を再現できます。シラバスでは、AIの利用で配慮すべき「その他の重要な価値」の1つとして挙げられています。
何が問題になるのか
故人を再現するAIは、追悼や記録、教育に役立つ可能性があります。一方で、故人は同意することも、再現された言葉を訂正することもできません。主な懸念は次のとおりです。
- 本人が言わなかったことを、本人の言葉のように語らせてしまう
- 広告や娯楽に使われ、故人の名誉やイメージを傷つける
- 遺族が望まない形で公開され、悲しみを深める
- 本物の記録と誤解される
2019年には、深層学習を使った歌声合成で美空ひばりさんの歌声を再現し、等身大の3D映像とともに新曲を披露する試みが、テレビ番組で放送されました。技術の可能性を示すと同時に、故人をどこまで再現してよいかを考える材料にもなりました。
法律による保護は限られる
故人を守る法律の仕組みは、生きている人に比べて限られています。
- 個人情報保護法の「個人情報」は、生存する個人の情報です(2条1項)。故人の情報は原則として対象外ですが、遺族の情報でもある場合は、遺族の個人情報に当たります。
- 刑法は、死者の名誉毀損を、虚偽の事実を摘示した場合に限って処罰します(230条2項)。
- 著作権法は、著作物を公衆に提供・提示する者に対し、著作者の死後も、生きていれば著作者人格権の侵害となる行為を原則として禁じています(60条)。
法律の制約が小さい場面ほど、倫理的な配慮が重要になります。
実務での配慮
生前の意思を確かめ、わからなければ遺族の意向を聞きます。AIで生成したことを明示し、故人の考えと異なる発言はさせません。公開の範囲や期間も、遺族と相談して決めます。
G検定での出題
出題のされ方
故人の声や姿をAIで再現する事例を読み、どのような配慮が必要かを判断させる形が考えられます。故人の情報が個人情報保護法の対象外であっても、本人の意思や遺族への配慮が求められる点が要点です。
最新動向法改正やガイドラインの改訂はG検定の法律・倫理分野の最新動向にまとめています。
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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日本の刑法では、死者の名誉を毀損する行為は、虚偽の事実を摘示した場合でなければ罰せられない。
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答え ◯ 正しい
刑法230条2項の定めです。生きている人の名誉毀損では、摘示した事実が真実かどうかにかかわらず処罰の対象になりうる点と異なります。
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著作権法は、著作物を公衆に提供・提示する者に対し、著作者の死後も、著作者が生きていれば著作者人格権の侵害となる行為を原則として禁じている。
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答え ◯ 正しい
著作権法60条の定めです。遺族は、違反する行為をする者に対して、差止めなどを請求できます(116条)。
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死者への敬意の観点からは、故人の声や姿をAIで再現すること自体が、目的や同意の有無にかかわらず一律に許されないとされている。
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答え × 誤り
追悼や記録として、生前の同意や遺族の意向を踏まえて行う再現もありえます。問題になるのは、本人の意思に反する言動をさせることや、本物と誤解させる公開などです。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (法律・倫理分野 項目17 その他の重要な価値)
- 個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号) (2条1項)
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」 (2-1 個人情報(※2 死者に関する情報))
- 刑法(明治40年法律第45号) (230条2項)
- 著作権法(昭和45年法律第48号) (60条、116条)
- ヤマハ株式会社 ニュースリリース「美空ひばりの新曲ライブの実現を支援」(2019年9月3日)