1行定義
保守契約とは、システムやAIモデルが稼働した後に、障害への対応や点検、改善などの作業を一定の期間続けて行うことを約束する契約のことです。
くわしく
保守契約は、システムが動き始めた後の手入れを、一定の期間任せるための契約です。障害が起きたときの対応、定期的な点検、問い合わせへの回答、小さな改修などを、どこまで、いくらで行うかを決めます。AIの場合は、運用中に精度が下がるという特有の問題があり、その扱いが大きな論点になります。
契約の性質
保守の作業は、内容によって契約の性質が変わります。一定期間の監視や問い合わせ対応のように、作業を行うこと自体を約束するなら準委任契約です。受託者は善管注意義務を負いますが、結果の達成までは約束しません(民法644条、656条)。特定の改修を仕上げて納めるなら、請負契約の性質をもちます(632条)。共通のルールを基本契約で定め、作業ごとの個別契約で契約の型を選ぶ方法もあります。
AIの保守で特に決めること
従来のソフトウェアは、手を加えなければ同じ動きを続けます。学習済みモデルも、多くは同じ入力に同じ出力を返します。それでも、世の中のデータの傾向が変わると、精度が下がることがあります。たとえば需要予測モデルは、消費者の行動が変わると外れやすくなります。これはプログラムの不具合とは性質が違うため、次の点を契約で明確にします。
- 再学習を保守の範囲に含めるか。含めるなら頻度、費用、実施の基準
- 再学習に使うデータを、誰が、いつ、どの形式で用意するか
- 再学習でできたモデルの権利と、利用できる範囲
- 精度を監視する方法と、報告の頻度
経済産業省の「AI・データの利用に関する契約ガイドライン(AI編)」も、開発の後に追加学習の段階を置いています。ただし、この段階のモデル契約は示されていないため、内容は当事者が個別に決めることになります。開発契約の段階から運用後の保守の範囲を話し合っておくと、後の対立を防げます。
覚え方
「AIの保守は、直すだけでなく学び直しも決める」と覚えます。
G検定での出題
出題のされ方
運用中にデータの傾向が変わって精度が下がるというAI特有の事情を踏まえ、再学習を保守の範囲に含めるか、費用やデータの受け渡し、再学習後のモデルの権利をどう定めるかが、事例で問われます。
最新動向法改正やガイドラインの改訂はG検定の法律・倫理分野の最新動向にまとめています。
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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保守契約は、作業の内容によって、準委任契約として結ぶことも、請負契約として結ぶこともある。
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答え ◯ 正しい
一定期間の監視や問い合わせ対応のように作業そのものを約束するなら準委任、特定の改修を仕上げて納めるなら請負の性質をもちます。契約の名前ではなく内容で判断されます。
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保守契約を準委任契約として結んだ場合、受託者は、善良な管理者の注意をもって保守の作業を行う義務を負う。
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答え ◯ 正しい
準委任には委任の規定が準用され、受託者は善管注意義務を負います(民法644条、656条)。
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経済産業省の契約ガイドライン(AI編)が示す探索的段階型は、開発段階でモデルを納めた時点で終わり、その後の段階は想定していない。
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答え × 誤り
開発段階の後に、追加のデータで学習済みモデルを学習し直す追加学習段階が置かれています。この段階のモデル契約は示されていないため、内容は当事者が契約で決めます。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (法律・倫理分野 項目6 AI開発委託契約)
- 民法(e-Gov法令検索) (632条、643条、644条、656条)
- 経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン(AI編)」(2018年6月) (探索的段階型の開発方式(追加学習段階)、モデル契約の対象範囲)