1行定義
隠れマルコフモデルとは、外から観測できない状態が確率的に移り変わり、各状態から確率的に観測値が出力されると考える確率モデルのことです。
くわしく
隠れマルコフモデル(HMM)は、時間とともに変わる現象を確率で表すモデルです。ディープラーニングが広まる前の音声認識で、中心的な役割を果たしました。
仕組み
HMMでは、現象の背後に、外からは見えない「状態」があると考えます。状態は、直前の状態だけで決まる確率(遷移確率)で次の状態へ移ります。この性質をマルコフ性といいます。各状態からは、状態ごとに決まった確率(出力確率)で、観測できる値が出てきます。観測できるのは出力された値の系列だけで、状態の系列は隠れています。これが名前の由来です。
代表的な計算には、観測系列が得られる確率を求める前向きアルゴリズム、最も確からしい状態の系列を求めるビタビアルゴリズム、データから確率を推定するバウム・ウェルチアルゴリズムがあります。
音声認識での使い方
従来の音声認識では、音素ごとにHMMを用意し、音声から取り出したMFCCなどの特徴量を観測値として扱いました。出力確率には、主に混合ガウス分布(GMM)を使いました。この音響モデルに、単語の読みを記した発音辞書と、単語の並びやすさを表す言語モデルを組み合わせて、最も確からしい単語列を探します。
2010年代に入ると、出力確率の計算をディープニューラルネットワークに置き換えたDNN-HMMが、精度を大きく高めました。その後、CTCなどを使い、音声から文字列までを1つのニューラルネットワークで学習するEnd-to-Endの手法が広まりました。
マルコフ決定過程との違い
どちらもマルコフ性を仮定します。マルコフ決定過程は行動と報酬をもち、強化学習で使います。HMMは行動も報酬ももたず、観測から隠れた状態を推し量るために使います。
覚え方
「見えない状態が、見える音を出す」と覚えます。
G検定での出題
出題のされ方
観測できない状態と観測値を分けて考える仕組み、従来の音声認識で音素ごとの音響モデルに使われた点、ディープラーニングやCTCを使う手法への移り変わりが問われます。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 隠れマルコフモデルこのページの用語 | 外から観測できない状態が確率的に移り変わり、各状態から確率的に観測値が出力されると考える確率モデル |
| マルコフ決定過程 | 次の状態と報酬が現在の状態と行動だけで確率的に決まるという仮定のもとで、意思決定の問題を表す数理的な枠組み |
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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隠れマルコフモデルで「隠れ」ているのは、直接は観測できない状態の系列であり、観測できるのは各状態から出力される値の系列である。
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答え ◯ 正しい
音声認識なら、観測できるのは音声から取り出した特徴量で、隠れた状態は発話中の音素などに対応します。
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隠れマルコフモデルは、エージェントが行動を選び、得られる報酬を最大にする方策を学習するための枠組みである。
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答え × 誤り
これはマルコフ決定過程と強化学習の説明です。隠れマルコフモデルには行動も報酬もなく、観測の系列から隠れた状態を推定するのに使います。
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観測された系列から、最も確からしい隠れた状態の系列を効率よく求める方法として、ビタビアルゴリズムが使われる。
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答え ◯ 正しい
動的計画法により、すべての状態の並びを調べなくても最適な系列を求められます。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目28 音声処理)
- Lawrence R. Rabiner, A tutorial on hidden Markov models and selected applications in speech recognition, Proceedings of the IEEE 77(2), 257–286 (1989)
- Geoffrey Hinton et al., Deep Neural Networks for Acoustic Modeling in Speech Recognition: The Shared Views of Four Research Groups, IEEE Signal Processing Magazine 29(6), 82–97 (2012)