1行定義
音韻とは、ある言語で意味の区別に使われる音を、物理的な音声から抽象化してとらえたもの、またはその音の体系のことです。
くわしく
音韻は、言葉に使われる音を「意味を区別する働き」から見たものです。同じ「ア」でも、人によって、また話すたびに、物理的な音は少しずつ違います。それでも日本語の話し手は、どれも同じ「ア」として聞き取ります。このように細かな違いをまとめ、その言語の中で役割をもつ音としてとらえたものが音韻です。
音声・音素との関係
人が発する空気の振動としての音そのものは音声と呼び、その物理的・生理的な性質を調べる分野を音声学といいます。一方、ある言語でどの音が区別され、どう組み合わさるかという音の体系を調べる分野が音韻論です。音韻を最も小さく区切った単位が音素で、文献によっては音韻と音素がほぼ同じ意味で使われます。どの音を区別するかは言語ごとに違い、英語で区別する音を日本語では区別しないこともあります。
韻律との違い
話し言葉には、どの音を並べるかという情報のほかに、声の高さの上がり下がり、音の長さ、強さ、間の取り方といった情報があります。これらを韻律(プロソディ)と呼びます。音声情報処理では、音の並びを音韻、話し方の調子を韻律として、分けて扱うのが一般的です。日本語の「雨」と「飴」のように、音の並びが同じでも、高さの配置で区別される語もあります。
AIでの使われ方
テキスト音声合成では、まず文章を解析して読みを音韻の並びに直し、アクセントや区切りから韻律を決めます。そのうえで、音韻と韻律の情報から音声の波形を作ります。音声認識では、音韻の情報が主にスペクトル包絡に表れるため、包絡をとらえる特徴量が使われます。一方、韻律は、問いかけの口調や話し手の感情を推定する手がかりになります。
覚え方
「音韻は何の音か、韻律はどう言うか」と覚えます。
G検定での出題
出題のされ方
物理的な音声と、言語の中で意味を区別する抽象的な音のまとまりとの違い、音素との関係、声の高さや長さなどの韻律との区別が、音声認識や音声合成の処理と結びつけて問われます。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 音韻このページの用語 | ある言語で意味の区別に使われる音を、物理的な音声から抽象化してとらえたもの、またはその音の体系 |
| 音素 | ある言語において、入れ替えると語の意味の違いを生み出す、最小の音の単位 |
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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音声学が音の物理的・生理的な性質を扱うのに対し、音韻論は、ある言語の中で音がどのような体系をなし、意味の区別にどう使われるかを扱う。
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答え ◯ 正しい
同じ音を対象にしても、音声学は「どんな音か」、音韻論は「その言語でどんな役割をもつか」に注目します。
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テキスト音声合成では、音韻の並びさえ正しければ、声の高さの変化や音の長さなどの韻律を推定しなくても、自然な音声が得られる。
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答え × 誤り
韻律が不適切だと、音韻が正しくても棒読みのような不自然な音声になります。音声合成では、音韻の並びとともに、声の高さや音の長さも予測します。
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日本語の「雨」と「飴」のように、音素の並びが同じでも、声の高さの配置(アクセント)の違いで語が区別されることがある。
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答え ◯ 正しい
東京の言葉では「雨」は「ア」が高く、「飴」は「メ」が高く発音されます。日本語は、声の高さの配置で語を区別する高低アクセントの言語です。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目28 音声処理)
- International Phonetic Association, Handbook of the International Phonetic Association: A Guide to the Use of the International Phonetic Alphabet, Cambridge University Press (1999)
- N. S. Trubetzkoy, Grundzüge der Phonologie, Travaux du Cercle Linguistique de Prague 7 (1939)
- Heiga Zen, Keiichi Tokuda, Alan W. Black, Statistical parametric speech synthesis, Speech Communication 51(11), 1039–1064 (2009)