1行定義
メル尺度とは、人が感じる音の高さの違いが等間隔になるように、周波数を目盛り直した尺度のことです。
くわしく
メル尺度は、人の耳の感じ方に合わせて周波数を目盛り直した尺度です。音声認識や音声合成で、音の特徴を聴覚に近い形で表すために使います。
なぜ必要か
人の耳は、低い音の高さの違いには敏感で、高い音の違いには鈍くなります。100Hzと200Hzは1オクターブ違い、はっきり別の高さに聞こえます。一方、同じ100Hzの差でも、4,000Hzと4,100Hzの違いはわずかです。周波数をそのまま等間隔に区切ると、耳が細かく聞き分ける低い周波数が粗く扱われ、高い周波数は必要以上に細かく扱われます。
目盛りの決め方と近似式
メル尺度は、1937年にスティーブンスらが聞き取りの実験をもとに作りました。1,000Hzの音の高さを1,000メルと定め、聞き手に「半分の高さ」に聞こえるよう音を調整させるなどして、目盛りを決めています。
計算では、近似式m = 2595 × log10(1 + f ÷ 700)がよく使われます。fは周波数(Hz)、mはメルの値です。計算例は次のとおりです。
- 100Hz→200Hz:約150メル→約283メル(約133メル増える)
- 4,000Hz→4,100Hz:約2,146メル→約2,170メル(約24メル増える)
同じ100Hzの差でも、高い周波数ではメルの差が小さくなります。
AIでの使われ方
音声を短い区間(フレーム)に分け、高速フーリエ変換(FFT)で周波数成分を求めます。その結果に、メル尺度の上で等間隔に並べた三角形のフィルタの組(メルフィルタバンク)をかけます。こうすると、低い周波数は細かく、高い周波数は粗くまとめられます。
この出力を時間の順に並べたものが、メルスペクトログラムです。音声認識の入力や、Tacotron 2などの音声合成の中間表現に使われます。さらに対数をとって離散コサイン変換したものが、MFCCです。
覚え方
「メルは耳のものさし。低い音ほど目盛りが細かい」と覚えます。
G検定での出題
出題のされ方
低い周波数ほど細かく、高い周波数ほど粗く区切る性質、人の聴覚の特性に合わせる理由、MFCCやメルスペクトログラムを求めるときのフィルタバンクでの使われ方が問われます。
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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メル尺度では、1,000Hzの純音の高さを1,000メルと定め、ほかの音の高さは、人が感じる高さの比にもとづいて目盛っている。
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答え ◯ 正しい
1937年のスティーブンスらの研究で、1,000Hzの音を1,000メルとする基準が定められました。聞き手に「半分の高さ」に聞こえるよう音を調整させるなどして目盛りを作っています。
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メル尺度では、周波数が2倍になると、メルの値も必ずちょうど2倍になる。
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答え × 誤り
よく使われる近似式では、1,000Hzは約1,000メル、2,000Hzは約1,521メルです。高い周波数ほど、同じ周波数の差に対するメルの増え方は小さくなります。
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メル尺度は、人が感じる音の大きさ(ラウドネス)を数値で表すための尺度である。
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答え × 誤り
メル尺度が表すのは、音の大きさではなく音の高さの感じ方です。音の大きさの感じ方には、フォン(phon)やソーン(sone)という別の尺度が使われます。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目28 音声処理)
- S. S. Stevens, J. Volkmann, E. B. Newman, A Scale for the Measurement of the Psychological Magnitude Pitch, The Journal of the Acoustical Society of America 8(3), 185–190 (1937)
- MathWorks, Audio Toolboxドキュメント「hz2mel」 (O'Shaughnessyの変換式 mel = 2595 × log10(1 + hz/700))
- Steven B. Davis, Paul Mermelstein, Comparison of parametric representations for monosyllabic word recognition in continuously spoken sentences, IEEE Transactions on Acoustics, Speech, and Signal Processing 28(4), 357–366 (1980)
- Jonathan Shen et al., Natural TTS Synthesis by Conditioning WaveNet on Mel Spectrogram Predictions (2017)