1行定義
フォルマントとは、声道の共鳴によって強められ、音声のスペクトル包絡に山として現れる周波数のことです。
くわしく
フォルマントは、母音の聞き分けを支える音声の特徴です。高い声でも低い声でも同じ「ア」に聞こえるのは、フォルマントの位置がおおむね変わらないためです。
声が作られる仕組み
声は、声帯の振動で生まれた音が、のどから唇までの声道を通って出ていくことで作られます。声帯が1秒間に振動する回数を基本周波数といい、声の高さを決めます。一方、声道は筒のような共鳴器としてはたらき、特定の周波数を強めます。この見方をソース・フィルタモデルと呼びます。
声道で強められた周波数は、スペクトル包絡(周波数ごとの強さのおおまかな形)に山として現れます。この山がフォルマントです。周波数の低いほうから第1フォルマント(F1)、第2フォルマント(F2)と呼び、それぞれの周波数をフォルマント周波数といいます。
共鳴の周波数の目安
声道を、のど側が閉じて唇側が開いた長さLの筒とみなすと、共鳴の周波数はFn = (2n - 1) × c ÷ (4L)で近似できます。音速cを秒速340m、Lを0.17mとすると、F1は340 ÷ (4 × 0.17) = 500Hz、F2は1,500Hz、F3は2,500Hzです。これは、口や舌に力を入れないあいまいな母音での目安です。実際には舌や唇の動きで声道の形が変わり、フォルマントの位置が動きます。声道の短い子どもでは、全体に高い位置に現れます。
母音との対応
母音は、F1とF2の組み合わせでおおむね区別できます。F1は口の開きの大きさ、F2は舌の前後の位置とよく対応します。口を大きく開ける「ア」はF1が高く、舌を前に出す「イ」はF2が高くなります。
AIとの関係
音声認識では、フォルマントを含むスペクトル包絡の情報を、MFCCなどの特徴量として取り出して使います。音声合成でも、フォルマントを指定して音を作るフォルマント合成が、初期の代表的な方式でした。
覚え方
「高さは声帯、母音は声道の共鳴」と覚えます。
G検定での出題
出題のされ方
母音の違いがフォルマントの位置に表れること、声の高さを決める基本周波数やスペクトル包絡との関係、MFCCなどの特徴量が何をとらえるかと結びつけて問われます。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| フォルマントこのページの用語 | 声道の共鳴によって強められ、音声のスペクトル包絡に山として現れる周波数 |
| スペクトル包絡 | 音声の周波数ごとの強さを表すスペクトルについて、細かな凹凸をならして得られる、なめらかな外形 |
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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舌の位置を低くして口を大きく開ける母音ほど、第1フォルマントの周波数は高くなる傾向がある。
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答え ◯ 正しい
第1フォルマントは、口の開きの大きさとよく対応します。口を大きく開ける「ア」では高く、口をあまり開けない「イ」や「ウ」では低くなります。
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同じ母音であれば、声道の長さが違う成人男性と子どもでも、フォルマント周波数はほぼ同じ値になる。
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答え × 誤り
共鳴の周波数は、声道が短いほど高くなります。そのため声道の短い子どもでは、同じ母音でもフォルマントが全体に高い位置に現れます。
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フォルマント合成は、フォルマントの周波数や帯域幅を指定し、共鳴の特性を表すフィルタに音源の信号を通して音声を作る方式である。
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答え ◯ 正しい
ニューラルネットワーク以前の代表的な音声合成方式の1つです。計算量が少なくて済む一方、肉声に比べて機械的な音になりやすい方式でした。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目28 音声処理)
- Gunnar Fant, Acoustic Theory of Speech Production, Mouton (1960)
- Gordon E. Peterson, Harold L. Barney, Control Methods Used in a Study of the Vowels, The Journal of the Acoustical Society of America 24(2), 175–184 (1952)
- Dennis H. Klatt, Software for a cascade/parallel formant synthesizer, The Journal of the Acoustical Society of America 67(3), 971–995 (1980)