1行定義
公正競争阻害性とは、独占禁止法が不公正な取引方法を規制する根拠となる、公正な競争を阻害するおそれのことです。
くわしく
公正競争阻害性は、独占禁止法が不公正な取引方法を規制するときの要件です。2条9項6号は、公正な競争を阻害するおそれがある行為のうち、公正取引委員会が指定するものを不公正な取引方法としています。法律が直接定める1号〜5号では、「正当な理由がないのに」「不当に」などの文言がこれに当たると一般に解されています。
競争の実質的制限との違い
私的独占や不当な取引制限は、市場を支配できる状態に至る「競争の実質的制限」を要件とします。公正競争阻害性はそれより低い水準で足り、競争が損なわれるおそれがあれば規制できます。独占やカルテルに至る前に、問題のある取引慣行を止めるしくみです。
3つの側面
一般に、1982年の独占禁止法研究会の報告に由来する次の3つの側面で説明されます。
- 自由競争減殺:競争者を市場から締め出したり、価格競争を弱めたりするおそれです。排他条件付取引や再販売価格の拘束などが当たります。
- 競争手段の不公正さ:価格や品質ではなく、不当な手段で顧客を奪うことです。ぎまん的顧客誘引などが当たります。
- 自由競争基盤の侵害:取引の相手方が自由かつ自主的に判断して取引できる状態を損なうことです。優越的地位の濫用が当たります。
判断の仕方
同じ行為でも、行為者の市場での地位や行為の広がりによって判断が変わります。たとえば流通・取引慣行ガイドラインは、取引先に競合品を扱わせない制限などを市場シェア20%以下の事業者が行っても、通常は公正な競争を阻害するおそれはないとしています。
AIやデータの分野
AIサービスの性能を実際より著しく優れていると誤認させて、競争者の顧客を奪えば、ぎまん的顧客誘引に当たりえます。取引上優越した事業者が、利用規約の変更で取引先に一方的な不利益を押し付ければ、優越的地位の濫用になりえます。
覚え方
「減殺・不公正な手段・基盤の侵害」の3つで整理します。
G検定での出題
出題のされ方
競争の実質的制限より低い水準で足りること、自由競争減殺・競争手段の不公正さ・自由競争基盤の侵害という3つの側面、抱き合わせや優越的地位の濫用などの類型との対応が問われます。
最新動向法改正やガイドラインの改訂はG検定の法律・倫理分野の最新動向にまとめています。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 公正競争阻害性このページの用語 | 独占禁止法が不公正な取引方法を規制する根拠となる、公正な競争を阻害するおそれ |
| 競争制限 | カルテルや他社の排除などによって、市場で事業者が価格や品質を競い合う働きを弱める行為や状態 |
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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独占禁止法の不公正な取引方法には、法律で直接定められた行為のほか、公正取引委員会が指定する行為も含まれる。
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答え ◯ 正しい
2条9項1号〜5号が法律で定める行為で、6号にもとづき公正取引委員会が指定する行為もあります。抱き合わせ販売や排他条件付取引は、この指定(一般指定)に含まれます。
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公正競争阻害性の有無は、行為者の市場での地位にかかわらず、行為の形式だけで一律に判断される。
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答え × 誤り
同じ行為でも、行為者の市場シェアや行為の広がりによって判断が変わります。流通・取引慣行ガイドラインは、市場シェアが20%を超えることを「市場における有力な事業者」の一応の目安としています。
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優越的地位の濫用が規制されるのは、取引の相手方が自由かつ自主的に判断して取引できる基盤を損なうためと考えられている。
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答え ◯ 正しい
公正競争阻害性の3つの側面のうち、自由競争基盤の侵害に当たります。価格や品質で競争するための前提を守る規制です。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (法律・倫理分野 項目5 独占禁止法)
- 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)(e-Gov法令検索) (2条5項・6項・9項、19条)
- 公正取引委員会「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」
- 公正取引委員会「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」
- 厚谷襄児「法定不公正な取引方法における『公正競争阻害性』について・再論」北大法学論集68巻4号(2017年) (公正競争阻害性の3つの側面と1982年の独占禁止法研究会報告)