1行定義
公平性の定義とは、AIの予測や判断が公平かどうかを確かめるために、グループ間や個人間で何をそろえれば公平とみなすかを定めた基準のことです。
くわしく
「公平なAI」といっても、何をもって公平とするかは1つに決まりません。AIを使うときは、まず「どの意味で公平か」を決め、測れる形にします。こうして定めた基準を、公平性の定義と呼びます。
集団公平性の主な基準
センシティブ属性で人をグループに分け、予測の割合や誤り率をグループ間でそろえる考え方です。
- 統計的パリティ(demographic parity):陽性と予測される割合(合格率など)をそろえる。
- 機会均等(equal opportunity):実際に陽性の人が陽性と予測される割合、つまり真陽性率をそろえる。
- 均等化オッズ(equalized odds):真陽性率に加えて、偽陽性率もそろえる。
- 予測パリティ:陽性と予測された人のうち、実際に陽性である割合(適合率)をそろえる。
センシティブ属性を入力に使わないこと(unawareness)も基準の1つです。ただし、関連する項目から属性が推測されうるため、それだけでは不十分です。
個人公平性
グループに分けずに、「似た人には似た結果を出す」ことを求める考え方です。何をもって似ているとするかを、用途ごとに決める必要があります。
基準どうしは両立しないことがある
2016年、報道機関のProPublicaは、米国の再犯予測ツールCOMPASについて、再犯しなかったのに高リスクと判定される割合が、黒人の被告で白人の被告のほぼ2倍だったと報じました。開発企業はこれに反論しました。
この論争をきっかけに、基準どうしの関係が数学的に調べられました。グループ間で実際の再犯率(基準率)が異なる場合、予測が完全でない限り、適合率をそろえる基準と、誤り率をそろえる基準は同時に満たせません。
基準の選び方
どの基準を優先するかは、技術だけでは決まりません。誤って不利に判定される害と、本来得られる機会を逃す害のどちらが重いかなど、用途と影響を踏まえて決めます。AI事業者ガイドラインの別添も、確保すべき公平性の内容を明確にするよう求めています。
G検定での出題
出題のされ方
統計的パリティ、機会均等、均等化オッズ、個人公平性などの基準を見分けさせる形や、基準どうしを同時には満たせない場合がある点、用途に応じて基準を選ぶ必要がある点が問われます。
最新動向法改正やガイドラインの改訂はG検定の法律・倫理分野の最新動向にまとめています。
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
-
機会均等(equal opportunity)は、実際に陽性かどうかにかかわらず、陽性と予測される割合をグループ間でそろえる基準である。
答えを見る
答え × 誤り
それは統計的パリティの説明です。機会均等は、実際に陽性の人に限って、陽性と予測される割合(真陽性率)をそろえます。
-
公平性の定義は研究者の間で1つに統一されており、その定義を満たせば、どの用途でも公平だと判断できる。
答えを見る
答え × 誤り
公平性の定義は複数あり、同時には満たせない組み合わせもあります。どれを優先するかは、用途や影響を受ける人への害を踏まえて決めます。
-
均等化オッズ(equalized odds)は、真陽性率と偽陽性率の両方を、センシティブ属性で分けたグループ間でそろえることを求める基準である。
答えを見る
答え ◯ 正しい
機会均等の条件(真陽性率)に加えて、偽陽性率もそろえる、より厳しい基準です。AI事業者ガイドラインの別添も、集団公平性の基準の例に挙げています。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (法律・倫理分野 項目10 公平性)
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添」(2026年3月31日) (別添3 D-3)ⅱ(p.106)、別添4 P-3)ⅰ コラム17 集団公平性及び個人公平性(pp.140–141))
- Cynthia Dwork, Moritz Hardt, Toniann Pitassi, Omer Reingold, Richard Zemel, Fairness Through Awareness, ITCS 2012
- Moritz Hardt, Eric Price, Nathan Srebro, Equality of Opportunity in Supervised Learning, NeurIPS 2016
- Jon Kleinberg, Sendhil Mullainathan, Manish Raghavan, Inherent Trade-Offs in the Fair Determination of Risk Scores (2016)
- Alexandra Chouldechova, Fair prediction with disparate impact: A study of bias in recidivism prediction instruments (2017)
- Julia Angwin, Jeff Larson, Surya Mattu, Lauren Kirchner, Machine Bias(ProPublica、2016年5月23日)