1行定義
データの偏りとは、AIの学習や評価に使うデータが、特定の集団の過不足や社会の偏見を含み、現実の対象や望ましい判断を正しく反映していない状態のことです。
くわしく
AIはデータから学ぶため、データが偏っていれば、その偏りを判断に持ち込みます。データの偏りは、アルゴリズムバイアスの主な原因の1つです。AI事業者ガイドラインの別添も、データは現実の一部を切り取ったものにすぎず、特定のコミュニティがデータ上に少なすぎたり多すぎたりするおそれがあると注意しています。
主な種類
偏りの入り方は、いくつかに分けて考えると整理しやすくなります。
- 代表性の偏り:特定の集団のデータが少ない。2018年の研究では、顔分析の評価に使われていた2つのデータセットで、肌の色が明るい人が約80%と約86%を占めていました。集め方に原因がある場合は、サンプリングバイアスと呼びます。
- 歴史的な偏り:データは正確でも、過去の社会の不平等や差別的な判断をそのまま記録している。
- 測定の偏り:測り方や記録の仕方が集団によって違う。知りたいものの代わりに測りやすい量を使うと、その代理変数のずれも入ります。
- ラベルの偏り:正解ラベルを付ける人の先入観が反映される。
AIへの影響
データに少ない集団では精度が下がり、誤りがその集団に集中します。全体の精度が高くても、この偏りは平均に埋もれて見えにくくなります。社会の偏見を含むデータで学習すると、AIはそれを再現します。その判断が広く使われると、偏りがさらに広がることもあります。
対策
データの出どころと集め方を記録し、集団ごとの件数や比率を確かめます。不足する集団のデータを補い、集団ごとに精度や誤り率を評価します。入力ミスを直すデータクレンジングだけでは、こうした偏りは取り除けません。
不均衡データとの区別
不良品が全体の1%しかないといった、分類のクラスごとの件数の差も「データの偏り」と呼ばれることがあります。こちらは不均衡データと呼ばれ、主に予測精度の問題として扱います。公平性の文脈でいうデータの偏りとは、論点が異なります。
G検定での出題
出題のされ方
特定の集団がデータに少ない、過去の判断の偏りがデータに残っているといった事例から原因を見抜かせる形が中心です。データを増やすだけでは解決しない点や、集団ごとの評価などの対策も問われます。
最新動向法改正やガイドラインの改訂はG検定の法律・倫理分野の最新動向にまとめています。
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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顔分析の評価に広く使われていた2つのデータセットを調べた2018年の研究では、肌の色が明るい人の画像がそれぞれ約80%と約86%を占めていたと報告されている。
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答え ◯ 正しい
Gender Shadesという研究の結果です。評価用のデータが偏っていると、特定の集団での精度の低さに気づけません。
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データの偏りは、入力ミスや欠損を取り除くデータクレンジングを行えば、すべて解消できる。
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答え × 誤り
クレンジングで直せるのは記録の誤りです。集団の過不足や、正確に記録された過去の不平等は、クレンジングでは取り除けません。
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測定の方法や精度が集団によって異なると、データの収集手順が定められたとおりでも、記録された値そのものに偏りが生じることがある。
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答え ◯ 正しい
測定の偏りと呼ばれます。どの集団のデータを集めたかだけでなく、どう測ったかも確かめる必要があります。
この用語の練習問題
この用語を扱う練習問題は準備中です。「公平性」の問題を解く
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (法律・倫理分野 項目10 公平性)
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添」(2026年3月31日) (別添3 D-3)ⅰ データに含まれるバイアスへの配慮(p.98))
- Harini Suresh, John Guttag, A Framework for Understanding Sources of Harm throughout the Machine Learning Life Cycle, EAAMO 2021
- Joy Buolamwini, Timnit Gebru, Gender Shades: Intersectional Accuracy Disparities in Commercial Gender Classification, FAT* 2018, PMLR 81:77–91
- Reva Schwartz et al., Towards a Standard for Identifying and Managing Bias in Artificial Intelligence, NIST Special Publication 1270 (2022) (3.1 Who is Counted? Datasets in AI Bias(pp.15–18)、5 Glossary(measurement bias))