要点まとめ・第10章 AI倫理・AIガバナンス
悪用(シラバス 法律・倫理12)
学習目標
AIが本来の目的から外れて、詐欺や世論操作、人権侵害などに使われるリスクを理解し、ディープフェイクとフェイクニュースの関係を整理したうえで、AIを開発・提供する側、利用する組織、社会のそれぞれがとれる対策を事例に当てはめて選べるようにします。
要点
悪用とは何か
AIの悪用は、本来の目的から外れた使い方で、人や社会に害を与えることです。同じ技術が役にも立ち、害にもなる点が難しいところです。たとえば音声合成は、声を失った人の支援にも、なりすまし詐欺にも使えます。
日本のAI法(2025年)は、AIの研究開発や活用が不正な目的や不適切な方法で行われると、犯罪への利用、個人情報の漏えい、著作権の侵害などを助長するおそれがあるとしています。そのうえで、透明性の確保などの施策を講じるよう定めています(3条4項)。国は、こうした権利侵害の事案を分析し、対策を検討することになっています(16条)。
典型的な悪用
- なりすまし詐欺:経営者や家族の声や顔をまねて、送金や情報の提供を指示します。
- 世論の操作:選挙で、候補者が言っていない発言の動画や画像を広めます。
- 人権の侵害:本人の同意なく、性的な画像や動画を作ります。
- 市場の混乱:AI事業者ガイドラインは、「国防総省の近くで爆発が起きた」とする生成AIの偽画像がSNSで広まり、株価が一時下落した例を挙げています。
生成AIで変わったのは、専門の知識がなくても、短時間で精巧な偽物を大量に作れるようになった点です。偽物が増えると、本物の映像まで「フェイクだ」と言い逃れされるおそれも出てきます。
ディープフェイクとフェイクニュース
| ディープフェイク | フェイクニュース | |
|---|---|---|
| 指すもの | AIで作った偽の映像・音声・画像 | 報道などを装って広まる、事実と異なる情報 |
| 作り方 | GAN、拡散モデル、音声合成など | 手段を問わない(文章だけのものも含む) |
| 関係 | フェイクニュースを作る手段の1つ | ディープフェイクを含む広い概念 |
偽の情報には、だます意図で作られたもの(偽情報)と、勘違いで広まったもの(誤情報)があります。AI事業者ガイドラインは、AIが作った偽情報・誤情報・偏った情報が社会を混乱させるリスクを踏まえて、対策をとるよう求めています。
対策は組み合わせる
| 立場 | 対策の例 |
|---|---|
| 開発者・提供者 | 禁止する用途を利用規約で示す、有害な出力を防ぐ、電子透かしや来歴の情報を付ける |
| 利用する組織 | 送金などの重要な指示は、登録済みの別の連絡先で本人に確かめる手順を決める |
| 社会・個人 | 発信元を確かめる、ファクトチェックを活用する、拡散する前に立ち止まる |
広島AIプロセスの国際指針は、電子透かしなどで、AIが作ったコンテンツを利用者が見分けられるようにする認証や来歴の仕組みの導入を掲げています。EUのAI法は、ディープフェイクを作るAIを利用する者に、AIで生成・加工したことの開示を求めています(50条4項)。
つまずきやすい点
- ディープフェイクはAIで作った偽の映像・音声・画像を指し、フェイクニュースは手段を問わず事実と異なる情報が報道などを装って広まるものを指す。ディープフェイクはフェイクニュースを作る手段の1つになる点
- 検出ツールは生成技術の進歩との追いかけっこになるため、ツールが本物と判定しても本物とは限らず、別の経路での本人確認や来歴の確認を組み合わせる必要がある点
- 電子透かしや来歴の情報はAIで作ったものを見分ける手がかりになるが、付いていない偽物や情報を消された偽物もあるため、それだけで真偽を決められない点
- 悪用への備えは利用者の注意だけで済むものではなく、AIを開発・提供する側にも、禁止する用途を利用規約で示し、有害な出力を防ぐ仕組みを入れることが求められる点
シラバスのキーワード
シラバス第1.4版に載っている語をすべて並べています。色のついた語は用語集で解説しています。「2問」などの数字は、その語を扱う練習問題の数です。
練習問題
- #0117 音声ディープフェイクへの備え 難易度 基礎・単一選択 未回答 付箋
- #0491 ディープフェイクとチープフェイク 難易度 基礎・単一選択 未回答 付箋
- #0492 ディープフェイクと法的責任 難易度 標準・単一選択 未回答 付箋
復習の時期が来た問題と、まだ解いていない問題から順に出題します。
この項目を読み終えたら
読んだ項目にチェックをつけると、学習ガイドの目次に記録されます。
前後の項目
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (法律・倫理分野 項目12 悪用)
- 人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(令和7年法律第53号)(e-Gov法令検索) (3条4項、16条)
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日) (第2部C 1)人間中心 ③偽情報等への対策、2)安全性 ②適正利用、第2部D 広島AIプロセス国際指針⑦)
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添」(2026年3月31日) (別添1 B. AIによる便益/リスク(偽・誤情報等の流通・拡散))
- Regulation (EU) 2024/1689 (Artificial Intelligence Act), EUR-Lex (Art. 50)