要点まとめ・第7章 AIの社会実装に向けて
データの収集・加工・分析・学習(シラバス 技術36)
学習目標
AIの学習に使うデータをどこから集め、どう整えて学習と評価に回すかの流れを理解し、オープンデータセットやコーパスを使うときの注意、アノテーションの品質の保ち方、データリーケージの防ぎ方を、具体的な場面に当てはめて判断できるようにします。
要点
データ準備の4つの段階
AIの精度は、手法よりもデータの量と質で決まることが少なくありません。実務では次の段階を行き来しながら進めます。
- 収集:自社の業務データ、オープンデータセット、Webから集めたデータなどを用意します。
- 加工:欠損や表記ゆれを直し、アノテーションで正解ラベルを付けます。
- 分析:分布や偏りを確かめ、学習に使えるかを見極めます。
- 学習:学習用・検証用・テスト用に分け、モデルを学習して評価します。
オープンデータセットとコーパス
オープンデータセットは、研究や開発のために公開されたデータの集まりです。画像認識のImageNetやMicrosoft COCOが代表例で、手法の性能を同じ条件で比べるベンチマークにも使われます。コーパスは、文章や発話を大量に集め、コンピュータで検索や分析ができるように整えたデータです。言語モデルの学習などに使われます。
使う前に、次の3点を確かめます。
- 利用条件:ライセンスで商用利用の可否や出典の表示が決められています。公開されていても、条件の範囲でしか使えません。
- 偏り:撮影地域や話者の属性が偏っていると、自社の利用場面で精度が落ちます。
- 権利:Webから集めたデータには、著作物や個人情報が含まれることがあります。著作権法や個人情報保護法の扱いも確認します。
どこから、どのように集めたかを記録しておくと、後で問題が見つかったときにたどれます。
アノテーション
アノテーションは、データに正解ラベルやタグを付ける作業です。画像なら物体を囲む枠、文章なら感情の分類などを付けます。教師あり学習では、ラベルの質がモデルの性能を左右します。
- 判断に迷う例を含めた作業基準を作ります。
- 同じデータを複数人で付け、一致の度合いを確かめます。
- 外部委託やクラウドソーシングで量を確保するときも、抜き取りで検査します。
データリーケージ
データリーケージは、本番の予測時点では使えない情報や、評価用のテストデータの情報が学習に紛れ込み、検証の評価だけが不当に高くなる現象です。本番に出すと精度が大きく落ちます。
| 典型例 | 起きていること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 解約予測に「解約受付日」の列を入れる | 答えそのものが特徴量に入っている | 予測の時点で手に入る情報か確かめる |
| 売上の時系列データをランダムに分割する | 未来のデータで過去を当てている | 時間の順に分割する |
| 同じ患者の画像が学習用とテスト用の両方にある | 個人の特徴を覚えて当てている | 患者単位で分割する |
| 全データの平均で正規化してから分割する | テスト用データの情報が学習側に漏れている | 学習用データだけで統計量を求める |
検証の精度が不自然に高いときは、まずリーケージを疑います。
つまずきやすい点
- データリーケージは、予測の時点では手に入らない情報やテスト用データの情報が学習に紛れ込み、検証の評価だけが高く出る現象で、社外への情報漏洩とは別の意味である点
- オープンデータセットは誰でも入手できるが、商用利用の可否や出典の表示などの条件はデータセットごとに異なり、自由に使えるとは限らない点
- アノテーションの基準があいまいだと作業者ごとにラベルがぶれ、モデルはそのぶれまで学習してしまう点
- 正規化や欠損値の補完に使う平均などを、テスト用データを含む全データから計算するのもリーケージになり、統計量は学習用データだけで求める点
シラバスのキーワード
シラバス第1.4版に載っている語をすべて並べています。色のついた語は用語集で解説しています。「2問」などの数字は、その語を扱う練習問題の数です。
練習問題
- #0088 データリーケージの防止策 難易度 応用・単一選択 未回答 付箋
- #0089 アノテーションの品質管理 難易度 標準・単一選択 未回答 付箋
- #0090 オープンデータセットとコーパス 難易度 標準・単一選択 未回答 付箋
- #0442 タスクに応じたコーパスの種類 難易度 基礎・組合せ 未回答 付箋
- #0443 アノテーションの負担を減らす工夫 難易度 標準・単一選択 未回答 付箋
- #0444 同一個体をまたぐデータ分割 難易度 応用・単一選択 未回答 付箋
- #0445 ベンチマークのコンタミネーション 難易度 標準・単一選択 未回答 付箋
復習の時期が来た問題と、まだ解いていない問題から順に出題します。
この項目を読み終えたら
読んだ項目にチェックをつけると、学習ガイドの目次に記録されます。
前後の項目
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目36 データの収集・加工・分析・学習)
- Shachar Kaufman, Saharon Rosset, Claudia Perlich, Ori Stitelman, Leakage in Data Mining: Formulation, Detection, and Avoidance, ACM Transactions on Knowledge Discovery from Data 6(4) (2012)
- scikit-learn User Guide, Common pitfalls and recommended practices(Data leakage)
- Olga Russakovsky et al., ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge (2014)
- Tsung-Yi Lin et al., Microsoft COCO: Common Objects in Context (2014)
- Timnit Gebru et al., Datasheets for Datasets (2018)
- 経済産業省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン 1.1版(データ編)」(2019年12月)