1行定義
価値原則とは、人間の尊厳、公平性、プライバシー、透明性など、AIの開発や利用で尊重すべき価値を、行動の指針となる原則として言葉にしたもののことです。
くわしく
価値原則は、AIの開発や利用で大切にすべき価値を、「人間の尊厳を守る」「不当な差別をしない」のような短い言葉の原則として示したものです。各国の政府や国際機関、企業が、こうした原則を指針にまとめてきました。シラバスでは、国内外のガイドラインの項目で、各文書に共通する考え方として扱われています。
代表的な価値原則
- 人間中心のAI社会原則(日本、2019年):人間の尊厳、多様性・包摂性、持続可能性を基本理念とし、7つの原則を示しました。
- OECDのAI原則(2019年採択、2024年改訂):包摂的な成長と持続可能な開発、人権と民主的価値(公平性とプライバシーを含む)、透明性と説明可能性、頑健性・セキュリティ・安全性、アカウンタビリティの5つを、価値にもとづく原則として掲げます。
- AI事業者ガイドライン(日本):人間中心、安全性、公平性、プライバシー保護、セキュリティ確保、透明性、アカウンタビリティなどを「共通の指針」としています。
文書ごとに言葉は違っても、中身はよく似ています。2019年に世界の指針を分析した研究も、透明性、正義と公正、無危害、責任、プライバシーの5つへの収束を報告しました。ただし、解釈や実践の方法には違いがあるとしています。
原則どうしの衝突
価値原則は、常に同時に満たせるとは限りません。AI事業者ガイドラインは、正確性を重視するためにプライバシーや公平性が損なわれたり、プライバシーを過度に重視して透明性が損なわれたりする場面があると述べています。その場合は、事業者の経営リスクや社会的な影響力を踏まえて判断し、必要に応じて修正します。
原則から実践へ
原則は抽象的で、そのままでは作業手順になりません。どの指標で公平性を確かめるか、誰が承認するかといった具体策に落とし込むのがAIガバナンスです。その際は、リスクの大きさに応じて対策の程度を決めます。
覚え方
「言葉は違っても中身は似ている。ただし、ぶつかることもある」と覚えます。
G検定での出題
出題のされ方
国内外のガイドラインに共通して掲げられる価値(人間中心、公平性、透明性、プライバシー、安全性、アカウンタビリティなど)と、原則どうしが衝突する場面、抽象的な原則を実践に移す方法が問われます。
最新動向法改正やガイドラインの改訂はG検定の法律・倫理分野の最新動向にまとめています。
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
-
価値原則は、AIの技術的な性能を高めるための設計の指針であり、人権や民主主義のような社会的な価値は対象に含まない。
答えを見る
答え × 誤り
OECDのAI原則は、人権と民主的価値を価値にもとづく原則の1つに掲げています。日本の人間中心のAI社会原則も、人間の尊厳を基本理念の1つとしています。
-
価値原則は抽象的な言葉で書かれるため、それだけで現場の具体的な作業手順が決まるわけではない。
答えを見る
答え ◯ 正しい
「公平性」を何で測り、どこまで求めるかは、用途や状況によって変わります。原則を具体的な基準や手順に落とし込むのが、AIガバナンスの役割です。
-
世界の主要なAI倫理の指針を分析した研究では、透明性、公正、プライバシーなどの原則が、多くの指針に共通して掲げられていることが示された。
答えを見る
答え ◯ 正しい
2019年のJobinらの研究は、透明性、正義と公正、無危害、責任、プライバシーの5つに収束する傾向を示しました。ただし、各原則の解釈や実践の方法には違いがあるとも指摘しています。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (法律・倫理分野 項目8 国内外のガイドライン)
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日) (第2部A「基本理念」・B「原則」・C「共通の指針」、第3部「AI開発者に関する事項」冒頭)
- 統合イノベーション戦略推進会議決定「人間中心のAI社会原則」(2019年3月29日)
- OECD, OECD AI Principles(2019年5月採択、2024年5月改訂) (Values-based principles)
- Anna Jobin, Marcello Ienca, Effy Vayena, Artificial Intelligence: the global landscape of ethics guidelines, Nature Machine Intelligence 1, 389–399 (2019)