1行定義
モデル汚染とは、配布される学習済みモデルや、共同で学習中のモデルの重みなどに攻撃者が細工を加え、狙いどおりに誤動作させる攻撃のことです。
くわしく
モデル汚染(モデルポイズニング)は、AIモデルの重みそのものに細工をして、振る舞いを攻撃者の思いどおりに変える攻撃です。データ汚染が学習データを汚すのに対し、モデル汚染は、できあがったモデルや学習途中のモデルの更新を直接汚します。推論時の入力に細工するAdversarial Examplesとも、仕掛ける対象が異なります。
なぜ狙われるのか
現在のAI開発では、事前学習済みのモデルを入手し、自社のデータでファインチューニングして使うことが一般的です。その分、モデルの作成者や配布元を信頼することになります。AI事業者ガイドラインの別添は、典型的な手法として事前学習モデルへのバックドアの設置を挙げています。攻撃者の例には、外部の攻撃者だけでなく、AIモデルの提供者も含まれています。
主な手口
- バックドアの埋め込み:特定の合図(トリガー)を含む入力のときだけ、攻撃者が決めた出力をするようにモデルを作り込み、配布します。通常の入力では正しく動くため、精度の評価だけでは気づきにくくなります。2020年には、事前学習済みの言語モデルの重みに仕込んだバックドアが、ファインチューニング後も働きうることが示されました。
- 連合学習での不正な更新:連合学習では、複数の参加者が手元のデータで学習し、更新だけを集めて1つのモデルを作ります。悪意のある参加者が細工した更新を送れば、全体のモデルにバックドアを仕込めることが示されています。
運用時にトリガー入りの入力でバックドアを発動させる行為は、ガイドラインでは「汚染モデルの悪用」として別に整理されています。
対策
ガイドラインの別添は、モデルの学習・提供プロセスの信頼性の確認、ポイズニングの検知技術の利用、ポイズニングの除去・軽減などを挙げています。実務では、信頼できる配布元から入手し、ファイルの改ざんの有無を確かめ、トリガーの有無も含めて挙動を検証します。
G検定での出題
出題のされ方
学習済みモデルそのものに細工する攻撃である点を、学習データを汚すデータ汚染や、推論時の入力を細工するAdversarial Examplesと区別させる形や、モデルの入手経路の確認などの対策が問われます。
最新動向法改正やガイドラインの改訂はG検定の法律・倫理分野の最新動向にまとめています。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| モデル汚染このページの用語 | 配布される学習済みモデルや、共同で学習中のモデルの重みなどに攻撃者が細工を加え、狙いどおりに誤動作させる攻撃 |
| データ汚染 | AIの学習に使われるデータに攻撃者が不正なデータを紛れ込ませ、学習後のモデルの判断を誤らせたり、ゆがめたりする攻撃 |
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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連合学習では、参加者の1人が細工したモデルの更新を送ることで、全体のモデルにバックドアを仕込める場合がある。
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答え ◯ 正しい
各参加者の学習データは共有されず、更新だけが集められるため、不正な更新を見分けにくいことが背景にあります。2018年の研究で示されました。
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AI事業者ガイドラインの別添は、モデルポイズニング攻撃の攻撃者の例として、外部の攻撃者だけでなく、AIモデルの提供者も挙げている。
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答え ◯ 正しい
モデルを作って配布する側が細工をすれば、利用者は入手した時点で汚染されたモデルを使うことになります。入手経路の信頼性の確認が対策になります。
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モデル汚染は、運用中のモデルに細工した入力を与えて、その場で誤認識させる攻撃のことである。
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答え × 誤り
それはAdversarial Examples(回避攻撃)の説明です。モデル汚染は、モデルの重みそのものに細工をしておく攻撃です。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (法律・倫理分野 項目11 安全性とセキュリティ)
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添」(2026年3月31日) (別添3 表7(p.111)・表8(p.126)、別添4 P-5)ⅱ 脆弱性への対応(p.152))
- Tianyu Gu, Brendan Dolan-Gavitt, Siddharth Garg, BadNets: Identifying Vulnerabilities in the Machine Learning Model Supply Chain (2017)
- Keita Kurita, Paul Michel, Graham Neubig, Weight Poisoning Attacks on Pre-trained Models, ACL 2020
- Eugene Bagdasaryan, Andreas Veit, Yiqing Hua, Deborah Estrin, Vitaly Shmatikov, How To Backdoor Federated Learning, AISTATS 2020
- Arjun Nitin Bhagoji, Supriyo Chakraborty, Prateek Mittal, Seraphin Calo, Analyzing Federated Learning through an Adversarial Lens, ICML 2019