1行定義
データ汚染とは、AIの学習に使われるデータに攻撃者が不正なデータを紛れ込ませ、学習後のモデルの判断を誤らせたり、ゆがめたりする攻撃のことです。
くわしく
データ汚染(データポイズニング)は、AIの学習データに手を加えて、できあがるモデルの振る舞いをゆがめる攻撃です。機械学習のモデルはデータから規則性を学ぶため、学習データが汚れると、汚れた規則性まで学んでしまいます。
仕組みと手口
攻撃者は、Webから自動で集められるデータ、外部から入手したデータセット、利用者からのフィードバックなど、学習データの入り口に不正なデータを紛れ込ませます。たとえば、誤ったラベルを付けた画像を混ぜると、モデルが引く判断の境界がずれます。2012年には、サポートベクターマシンの学習データに細工したデータを加えることで、テスト時の誤りを大きく増やせることが示されました。
狙いは大きく2つあります。1つは、モデル全体の精度を下げることです。もう1つは、特定の合図(トリガー)が入力に含まれたときだけ、攻撃者の望む出力をさせることです。後者はバックドア攻撃と呼ばれ、普段は正しく動くため、通常のテストでは見つけにくくなります。シールを貼った一時停止の標識だけを速度制限の標識と誤認識させる例が知られています。
大規模言語モデルも例外ではありません。2025年の研究では、調べた範囲のモデルの規模によらず、約250件の細工した文書でバックドアを仕込めたと報告されています。
ほかの攻撃との違い
データ汚染は学習時の攻撃です。学習済みのモデルは変えずに、推論時の入力を細工するAdversarial Examplesとは、仕掛ける段階が違います。配布される事前学習済みモデルそのものに細工するモデル汚染とも区別します。
対策
AI事業者ガイドラインの別添は、データセットの真正性や、収集・加工のプロセスの信頼性を確認することを挙げています。データの来歴を記録し、異常なデータを検知する技術や、汚染の影響を受けにくい学習方法を使うことも有効です。
G検定での出題
出題のされ方
学習時に仕掛ける攻撃である点を、推論時の入力を細工するAdversarial Examplesや、モデルを複製するモデル窃取と区別させる形が中心です。データの来歴の管理などの対策も問われます。
最新動向法改正やガイドラインの改訂はG検定の法律・倫理分野の最新動向にまとめています。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| データ汚染このページの用語 | AIの学習に使われるデータに攻撃者が不正なデータを紛れ込ませ、学習後のモデルの判断を誤らせたり、ゆがめたりする攻撃 |
| Adversarial Attack | 人には気づきにくい小さな細工を入力データに加え、AIモデルに誤った判断をさせる攻撃 |
| モデル汚染 | 配布される学習済みモデルや、共同で学習中のモデルの重みなどに攻撃者が細工を加え、狙いどおりに誤動作させる攻撃 |
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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データ汚染の手口には、通常の入力には正しく応答し、攻撃者が決めた合図(トリガー)を含む入力のときだけ誤った出力をするよう、モデルに仕込むものがある。
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答え ◯ 正しい
バックドア攻撃と呼ばれます。普段の精度は下がらないため、通常のテストでは気づきにくい点が厄介です。
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データ汚染は、学習済みモデルを推論に使う段階で、入力データに人には見えないノイズを加えて誤認識させる攻撃である。
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答え × 誤り
それはAdversarial Examples(回避攻撃)の説明です。データ汚染は学習データに手を加え、学習の段階でモデルをゆがめます。
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大規模言語モデルの事前学習データは膨大なため、データ汚染を成功させるには、学習データ全体に対して一定以上の割合の不正データを混ぜる必要があることが実験で確かめられている。
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答え × 誤り
2025年の研究では、調べた範囲のモデルの規模によらず、約250件の細工した文書でバックドアを仕込めたと報告されています。割合ではなく件数が効くという結果です。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (法律・倫理分野 項目11 安全性とセキュリティ)
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添」(2026年3月31日) (別添3 表7 機械学習利用システムの被害と脅威の例、別添4 P-5)ⅱ. 脆弱性への対応)
- Battista Biggio, Blaine Nelson, Pavel Laskov, Poisoning Attacks against Support Vector Machines, ICML 2012
- Tianyu Gu, Brendan Dolan-Gavitt, Siddharth Garg, BadNets: Identifying Vulnerabilities in the Machine Learning Model Supply Chain (2017)
- Alexandra Souly et al., Poisoning Attacks on LLMs Require a Near-constant Number of Poison Samples (2025)