1行定義
データ窃取とは、AIの学習に使われたデータやAIシステムが扱うデータを、権限のない者が不正に持ち出したり、モデルの出力から推測して復元したりする攻撃のことです。
くわしく
データ窃取は、AIにかかわるデータを不正に手に入れる攻撃です。学習データには、顧客の情報や医療の記録など、秘密にすべきものが多く含まれます。
2つの経路
1つは従来型の攻撃です。サーバーへの不正アクセスや、内部の関係者による持ち出しによって、データそのものを盗みます。
もう1つは機械学習特有の攻撃です。学習済みモデルは学習データの特徴を取り込んでいるため、問い合わせと出力の観察だけで、学習データの情報を引き出せることがあります。AI事業者ガイドラインの別添は、これを「訓練用データに関する情報漏洩攻撃」と呼び、機密性を侵害する脅威に挙げています。
機械学習特有の主な手口
- メンバーシップ推論攻撃:あるデータが学習に使われたかどうかを、出力の確信度などから推測します。特定の病気の患者のデータで学習したモデルなら、ある人がその病気の患者であることが漏れます。
- モデルインバージョン攻撃:出力を手がかりに、学習データに近い入力を復元します。2015年には、顔認識モデルの確信度から、学習に使われた人物だと見分けられる顔画像を復元できることが示されました。
- 学習データの抽出:生成AIに学習データをそのまま出力させます。2021年の研究では、GPT-2から学習データの文章が数百件そのまま取り出され、公開されていた氏名や電話番号なども含まれていました。
生成AIを社内文書とつないだシステムでは、細工した指示(プロンプトインジェクション)で、本来見せない情報を出力させる手口もあります。
モデル窃取との違い
モデル窃取はモデルの働きを写し取る攻撃で、データ窃取はデータを狙う攻撃です。どちらも機密性の侵害ですが、盗む対象が違います。
対策
アクセス制御や暗号化などの従来の対策に加え、過学習の抑制、出力する確信度などの情報の制限、差分プライバシーなどのプライバシー保護学習が有効です。学習データから不要な個人情報を除くことも基本です。
G検定での出題
出題のされ方
学習データの情報を狙う攻撃である点を、モデルの働きを写し取るモデル窃取や、学習データを汚すデータ汚染と区別させる形が中心です。過学習の抑制や出力の制限などの対策も問われます。
最新動向法改正やガイドラインの改訂はG検定の法律・倫理分野の最新動向にまとめています。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| データ窃取このページの用語 | AIの学習に使われたデータやAIシステムが扱うデータを、権限のない者が不正に持ち出したり、モデルの出力から推測して復元したりする攻撃 |
| モデル窃取 | 公開されたAIモデルに多数の入力を送り、返ってくる出力をもとに、元のモデルとほぼ同じ働きをするモデルを作り出す攻撃 |
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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顔認識モデルの出力の確信度を手がかりに、学習に使われた人物の顔だと見分けられる画像を復元できることが、研究で示されている。
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答え ◯ 正しい
2015年に示されたモデルインバージョン攻撃です。モデルの出力を観察するだけで、学習データに近い情報が漏れる例です。
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GPT-2を対象にした2021年の研究では、パラメータ数の大きいモデルほど、学習データの文章を抽出されやすいという結果が報告されている。
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答え ◯ 正しい
大きいモデルほど、学習データを多く記憶していたためです。モデルを大きくすると、学習データが漏れるリスクはむしろ高まりえます。
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データ窃取の手口は、学習データを保管するサーバーへの不正侵入に限られる。
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答え × 誤り
従来型の侵入に加えて、学習済みモデルへの問い合わせと出力の観察だけで学習データの情報を引き出す、機械学習特有の手口があります。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (法律・倫理分野 項目11 安全性とセキュリティ)
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添」(2026年3月31日) (別添3 表7(p.111)・表8(pp.126–127)、別添4 P-5)ⅱ 脆弱性への対応(pp.151–152))
- Reza Shokri, Marco Stronati, Congzheng Song, Vitaly Shmatikov, Membership Inference Attacks against Machine Learning Models, IEEE S&P 2017
- Matt Fredrikson, Somesh Jha, Thomas Ristenpart, Model Inversion Attacks that Exploit Confidence Information and Basic Countermeasures, ACM CCS 2015, 1322–1333
- Nicholas Carlini et al., Extracting Training Data from Large Language Models, USENIX Security 2021
- OWASP Top 10 for LLM Applications 2025, LLM02:2025 Sensitive Information Disclosure