1行定義
破滅的忘却とは、学習済みのニューラルネットワークに新しいタスクやデータを学習させると、以前に学習した内容の性能が大きく失われてしまう現象のことです。
くわしく
破滅的忘却(catastrophic forgetting)は、ニューラルネットワークが新しいことを学ぶと、以前に学んだことを急激に忘れてしまう現象です。破滅的干渉とも呼ばれます。1989年にMcCloskeyとCohenが、ニューラルネットワークに課題を順番に学習させる実験で報告しました。
なぜ起きるのか
ニューラルネットワークの知識は、多数の重みに分散して蓄えられています。新しいタスクを学ぶと、そのタスクの誤差を小さくするように、同じ重みが書き換えられます。このとき、古いタスクにとって大事だった重みも上書きされるため、古いタスクの性能が大きく下がります。少しずつ薄れるのではなく、新しい学習によって一気に崩れる点が「破滅的」と呼ばれる理由です。
どんな場面で問題になるか
事前学習済みモデルのファインチューニングで起こることがあります。たとえば、汎用の言語モデルを特定分野の文書だけで強く調整すると、分野の外の一般的な質問にうまく答えられなくなることがあります。データが次々と届き、モデルを順番に更新していく継続学習でも、中心的な課題です。
主な対策
- 学習率を小さくする、または一部の層の重みを固定(凍結)して、重みの変化を抑えます。
- 新しいデータに古いデータの一部を混ぜて学習します。リハーサルやリプレイと呼ばれます。
- 古いタスクで重要だった重みほど変わりにくくする罰則を、誤差関数に加えます。Kirkpatrickらが発表したEWC(Elastic Weight Consolidation)が代表例です。
過学習との違い
過学習は、訓練データに合わせすぎて、未知のデータでの性能が下がる現象です。破滅的忘却は、新しい学習によって以前のタスクの性能が失われる現象で、問題にしている対象が異なります。
覚え方
「新しい学びが、古い記憶を上書きする」と覚えます。
G検定での出題
出題のされ方
ファインチューニングや継続学習で起きる現象であること、重みが上書きされるという原因、学習率を下げる・層を凍結する・古いデータを混ぜるといった対策、過学習との違いが問われます。
混同しやすい用語
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 破滅的忘却このページの用語 | 学習済みのニューラルネットワークに新しいタスクやデータを学習させると、以前に学習した内容の性能が大きく失われてしまう現象 |
| 過学習 | モデルが学習データのノイズまで覚え込み、学習データではよく当たる一方で、未知のデータに対する予測の精度が下がる状態 |
◯×チェック
次の文が正しいか、誤りかを選んでください。
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破滅的忘却は、学習済みのモデルに新しいタスクを学習させたとき、以前のタスクに重要だった重みが上書きされることで起こる。
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答え ◯ 正しい
知識は多数の重みに分散して蓄えられています。新しいタスク向けに同じ重みを更新すると、古いタスクの性能が崩れます。
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EWCは、以前のタスクにとって重要な重みほど変化しにくくなるように罰則を加え、破滅的忘却を抑える手法である。
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答え ◯ 正しい
ネットワークを凍結するのではなく、重みごとに重要度を見積もり、重要な重みの学習だけを選んで遅くします。
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新しいデータに古いデータの一部を混ぜて学習するリハーサルは、破滅的忘却をかえって悪化させるため避けるべきである。
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答え × 誤り
リハーサル(リプレイ)は代表的な対策です。古いタスクの例を学習に含め続けることで、古いタスクの性能を保ちやすくなります。
この用語の練習問題
出典
- G検定 試験出題範囲(シラバス2024)第1.4版 (技術分野 項目31 転移学習・ファインチューニング)
- Michael McCloskey, Neal J. Cohen, Catastrophic Interference in Connectionist Networks: The Sequential Learning Problem, Psychology of Learning and Motivation (1989)
- James Kirkpatrick et al., Overcoming catastrophic forgetting in neural networks (2016, PNAS 2017)